歯並びを整えたいと考えたとき、多くの方が「ワイヤー矯正」と「マウスピース矯正」のどちらを選ぶべきか迷われます。それぞれにメリット・デメリットがあり、ご自身の生活スタイルや希望に合った方法を選ぶことが大切です。
この記事では、矯正歯科専門医の視点から、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の7つの重要な違いについて詳しく解説します。2025年最新の情報をもとに、それぞれの特徴を比較し、あなたに最適な矯正方法を見つけるお手伝いをします。
矯正治療は長期間にわたるものですから、しっかりと理解した上で選択することが成功への近道です。ぜひ最後までお読みいただき、あなたの歯並びの悩みを解決する第一歩としてください。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正の基本
まずは、それぞれの矯正方法の基本的な特徴について説明します。矯正治療の選択肢を考える前に、両者の違いを理解しておくことが重要です。
ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな装置を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を動かす最も一般的な矯正方法です。ワイヤーの力を利用して歯並びを整えていくため、複雑な歯の動きにも対応できる特徴があります。
一方、マウスピース矯正は透明なプラスチック製のマウスピースを使用します。代表的なものにインビザラインがあり、2〜3週間ごとに少しずつ形状の異なるマウスピースに交換しながら、徐々に歯を理想的な位置に動かしていきます。
マウスピース矯正の最大の特徴は、装置が透明で目立ちにくく、取り外しができるという点です。食事や歯磨きの際には外すことができるため、日常生活への影響が少ないという利点があります。
ワイヤー矯正の種類
ワイヤー矯正には主に以下の種類があります:
- 表側矯正:歯の表側にブラケットを装着する最も一般的な方法
- 裏側矯正:歯の裏側にブラケットを装着するため外からは見えにくい
- ホワイトワイヤー矯正:白い素材を使用したワイヤーで目立ちにくい
それぞれ見た目や装着感が異なりますが、基本的な治療原理は同じです。歯に固定された装置を使って確実に歯を動かしていきます。
マウスピース矯正の種類
マウスピース矯正の代表的なものには以下があります:
- インビザライン:世界シェアNo.1のマウスピース矯正システム
- キレイライン:主に前歯部分の矯正に特化したシステム
- その他のマウスピース矯正:シュアスマイル、クリアコレクト、アソアライナーなど
マウスピース矯正は日本国内だけでも20種類以上あり、それぞれに特徴があります。当院ではインビザラインを導入しており、世界で1,950万人以上が治療を受けている実績のあるシステムです。
違い1:見た目と目立ちやすさ
矯正治療を検討する際、多くの方が気にされるのが「見た目」です。特に大人になってからの矯正では、仕事や社会生活への影響を考慮する必要があります。
ワイヤー矯正は、金属製のブラケットとワイヤーを使用するため、どうしても目立ってしまいます。特に表側矯正では、会話や笑顔の際に装置が見えるため、人によっては気にされる方も多いでしょう。
近年では白いセラミック製のブラケットや透明なブラケットも選べるようになり、従来の金属製よりは目立ちにくくなっています。また、裏側矯正を選べば外からはほとんど見えませんが、費用が高くなる傾向があります。
マウスピース矯正は透明なプラスチック製のため、数メートル離れると装着していることがほとんど分からないほど目立ちません。
会議や接客など、人と対面する機会が多い方にとって、この「目立ちにくさ」は大きなメリットとなります。実際に当院でも、仕事の関係でワイヤー矯正を避けたいという理由でマウスピース矯正を選ばれる方が多くいらっしゃいます。
見た目を最優先するなら、マウスピース矯正が圧倒的に優位と言えるでしょう。
違い2:治療効果と適応症例
矯正方法を選ぶ際に最も重要なのは、ご自身の歯並びの状態に適した治療法かどうかという点です。すべての症例にマウスピース矯正が適用できるわけではありません。
ワイヤー矯正は、軽度から重度まであらゆる不正咬合に対応できる万能な治療法です。特に以下のような症例に効果的です:
- 大きく歯を動かす必要がある場合
- 奥歯を含めた全体的な咬み合わせの調整が必要な場合
- 歯を回転させるなど複雑な動きが必要な場合
- 抜歯を伴う治療が必要な場合
一方、マウスピース矯正は技術の進歩により対応できる症例が広がってきていますが、依然として限界があります。特に以下のような症例では効果が限定的な場合があります:
- 大幅な歯の移動が必要な場合
- 複雑な回転移動が必要な場合
- 垂直方向の歯の移動(圧下・挺出)が必要な場合
インビザラインのようなマウスピース矯正は、前歯だけでなく奥歯も含めた全体矯正に対応していますが、キレイラインなどの一部のマウスピース矯正は前歯6本ずつ(計12本)のみを対象としており、大きな歯の移動や抜歯を伴う治療には適していません。
当院では初診時に詳しく検査し、患者様の症例がマウスピース矯正に適しているかどうかを判断しています。場合によっては、最初にワイヤー矯正で大きく歯を動かした後、仕上げの段階でマウスピース矯正に切り替える「コンビネーション矯正」をご提案することもあります。
治療効果を最優先するなら、より幅広い症例に対応できるワイヤー矯正が優位と言えるでしょう。
上顎前突(出っ歯)の場合
上顎前突、いわゆる「出っ歯」の治療では、上の前歯を後ろに下げる必要があります。軽度から中等度の出っ歯であれば、マウスピース矯正でも十分に対応可能です。
しかし、重度の出っ歯で抜歯を伴う治療が必要な場合は、ワイヤー矯正の方が確実に歯を動かせるため適している場合が多いです。
下顎前突(受け口)の場合
下顎前突、いわゆる「受け口」の治療は、症状の程度によって適した矯正方法が異なります。軽度の場合はマウスピース矯正でも対応可能ですが、骨格的な問題が大きい場合は外科手術を併用したワイヤー矯正が必要になることもあります。
開咬の場合
前歯が咬み合わず、奥歯だけで咬んでいる「開咬」の治療は、垂直方向の歯の移動が必要になるため、一般的にはワイヤー矯正の方が効果的です。マウスピース矯正では対応が難しい場合が多いです。
違い3:痛みと不快感
矯正治療では、歯を動かす際に多少の痛みや不快感が伴います。これは避けられないものですが、その程度は矯正方法によって異なります。
ワイヤー矯正では、装置の装着直後や調整後に比較的強い痛みを感じることがあります。特に最初の1週間程度は痛みを感じる方が多く、食事が困難になることもあります。また、ブラケットやワイヤーが頬や唇の内側に当たって傷ができることもあります。
一方、マウスピース矯正では、新しいマウスピースに交換した直後に軽い圧迫感を感じることはありますが、ワイヤー矯正と比べると痛みは軽度で、すぐに慣れることが多いです。また、滑らかなプラスチック製なので、口内の傷ができにくいという利点もあります。
痛みに敏感な方や、仕事や学校生活への影響を最小限にしたい方には、マウスピース矯正の方が向いているかもしれません。
ただし、個人差があるため、必ずしもすべての方にあてはまるわけではありません。当院では痛みを軽減するための様々な工夫や対策をご提案しています。
痛みや不快感の少なさを重視するなら、マウスピース矯正が優位と言えるでしょう。
違い4:治療期間と通院頻度
矯正治療は一般的に長期間にわたるものですが、治療期間や通院頻度は矯正方法によって異なります。ご自身のライフスタイルに合った方法を選ぶことが大切です。
ワイヤー矯正の治療期間は、症例の複雑さによって異なりますが、一般的に1年半〜3年程度かかることが多いです。通院頻度は月に1回程度で、ワイヤーの調整や経過観察を行います。
マウスピース矯正の治療期間も症例によって異なりますが、軽度から中等度の症例では1年〜2年程度が一般的です。インビザラインの場合、通院頻度は2〜3ヶ月に1回程度と、ワイヤー矯正より少なくて済むことが多いです。
ただし、マウスピース矯正では患者様自身による装置の管理が重要です。1日20時間以上の装着が推奨されており、この装着時間が守られないと治療期間が延びる可能性があります。
また、キレイラインなどのマウスピース矯正では、インビザラインと異なり、通院のたびに歯型を取り直す必要があるため、通院頻度が増える場合があります。
忙しい方や遠方にお住まいの方にとっては、通院頻度の少ないインビザラインのようなマウスピース矯正が便利かもしれません。当院では遠隔モニタリングを併用することで、さらに通院回数を減らすことも可能です。
通院の負担を減らしたい方には、マウスピース矯正(特にインビザライン)が優位と言えるでしょう。
違い5:メンテナンスのしやすさと口腔衛生
矯正治療中の口腔衛生管理は非常に重要です。装置によって歯磨きのしやすさが大きく異なるため、ご自身の生活習慣に合った方法を選ぶことが大切です。
ワイヤー矯正では、ブラケットやワイヤーの周りに食べ物が詰まりやすく、通常より丁寧な歯磨きが必要になります。専用の歯ブラシや歯間ブラシを使用する必要があり、歯磨きに時間がかかることが多いです。
また、装置の周りに歯垢が溜まりやすいため、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。実際、ワイヤー矯正患者はマウスピース矯正患者と比べて歯垢の蓄積が9倍多いという研究結果もあります。
一方、マウスピース矯正は装置を外して通常通り歯磨きができるため、口腔衛生の維持が格段に容易です。食事や歯磨きの際にマウスピースを外すことで、食べ物が詰まる心配もなく、通常通りのケアが可能です。
ただし、マウスピース自体の清掃も必要です。マウスピースを装着したまま飲食すると、装置の内側に食べ物や飲み物が溜まり、虫歯のリスクが高まります。特に色素の強い飲み物(コーヒーや赤ワインなど)はマウスピースを変色させる原因になるため注意が必要です。
また、マウスピース矯正でも油断は禁物です。研究によると、マウスピース矯正患者は歯垢の蓄積は少ないものの、脱灰(虫歯になる直前の状態)の面積がワイヤー矯正患者の2倍広いという結果も報告されています。これはマウスピースが歯を覆うことで唾液による洗浄効果が減少するためと考えられています。
口腔衛生の維持のしやすさを重視するなら、マウスピース矯正が優位と言えるでしょう。
違い6:費用と支払い方法
矯正治療は自由診療のため、費用は歯科医院によって異なります。一般的な費用相場と支払い方法の違いについて説明します。
ワイヤー矯正の費用は、使用する装置の種類や治療範囲によって大きく異なります。一般的な相場は以下の通りです:
- 表側矯正:約30万〜130万円
- 裏側矯正:約40万〜170万円
- ハーフリンガル矯正(上顎裏側・下顎表側):約35万〜150万円
マウスピース矯正の費用も医院やブランドによって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです:
- 部分矯正(前歯のみ):約10万〜40万円
- 全体矯正:約60万〜100万円
インビザラインは一般的にパッケージ料金制で、治療開始時に費用が確定していることが多いです。一方、キレイラインなどの一部のマウスピース矯正では、調整ごとに費用が発生するケースもあります。
費用面では、部分矯正ならマウスピース矯正の方が安い傾向にありますが、全体矯正の場合はワイヤー矯正とマウスピース矯正で大きな差はないことが多いです。
また、矯正費用には初診料、検査料、装置代、調整料、保定装置代など様々な費用が含まれます。医院によっては分割払いやローンの利用も可能なので、費用面で不安がある場合は相談してみることをおすすめします。
当院では患者様のご予算に合わせた治療計画のご提案も行っています。まずはお気軽にご相談ください。
違い7:生活への影響と制限
矯正治療中の生活への影響や制限は、矯正方法によって大きく異なります。ご自身のライフスタイルに合った方法を選ぶことが大切です。
ワイヤー矯正では、装置が固定されているため、以下のような制限があります:
- 硬いものや粘着性のある食べ物を避ける必要がある
- 装置が外れるリスクがあるため、激しいスポーツ時はマウスガードが必要
- 管楽器の演奏に影響が出る場合がある
- 就寝時も装置を装着している(取り外しができない)
一方、マウスピース矯正では、装置を取り外すことができるため、以下のような利点があります:
- 食事の際に装置を外すため、食べ物の制限がない
- スポーツや楽器演奏の際に一時的に外すことができる
- 特別なイベント(結婚式や重要な会議など)の際に一時的に外すことができる
ただし、マウスピース矯正では1日20時間以上の装着が推奨されており、この装着時間を守る自己管理能力が求められます。装着時間が不十分だと治療効果が得られず、治療期間が延びる可能性があります。
また、マウスピースの交換頻度(一般的に2週間ごと)を守る必要があり、紛失や破損のリスクもあります。外出先でマウスピースを紛失すると治療に支障が出る可能性があるため、常に専用ケースを持ち歩く必要があります。
生活への制限が少ないことを重視するなら、マウスピース矯正が優位と言えるでしょう。
どうでしょうか?ワイヤー矯正とマウスピース矯正の7つの違いについて理解が深まりましたか?
矯正方法の選択は、歯並びの状態だけでなく、ライフスタイルや価値観によっても異なります。見た目を重視する方、痛みに敏感な方、忙しくて通院回数を減らしたい方にはマウスピース矯正が向いているかもしれません。一方、確実な治療効果を求める方や複雑な歯並びの問題がある方にはワイヤー矯正が適している場合が多いです。
当院では患者様一人ひとりの状態や希望に合わせた最適な矯正方法をご提案しています。まずは無料相談にお越しいただき、あなたに最適な矯正方法を一緒に考えていきましょう。
歯並びの悩みを解決し、自信を持って笑顔になれる日を目指して、私たちがサポートいたします。
著者情報
Belle歯科・矯正歯科院長 竹内優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会