矯正歯科医選びで失敗しないための基本知識
歯並びの悩みを解消するために矯正治療を検討している方は多いでしょう。しかし、どの矯正歯科医を選べばよいのか迷ってしまうことがあります。
矯正治療は数年にわたる長期的な治療であり、費用も決して安くありません。そのため、信頼できる矯正歯科医を選ぶことが非常に重要です。
実は日本では、歯科医師免許さえあれば、専門的な教育や研修の経歴に関わらず矯正治療を行うことができるのです。つまり、看板に「矯正歯科」と掲げていても、矯正治療の専門知識や経験が十分でない場合もあるということです。
私は日本矯正歯科学会認定医として多くの患者さんの治療に携わってきましたが、「以前に矯正治療を受けたけれど満足できなかった」という相談を受けることも少なくありません。
そこで今回は、矯正歯科医選びで見るべき5つの重要な資格と診断技術について詳しく解説します。この記事を参考に、あなたに合った矯正歯科医を見つけていただければ幸いです。
矯正歯科医の資格と専門性の違い
矯正歯科医を選ぶ際、まず知っておきたいのが「資格」の違いです。一般的に矯正歯科の分野では、「認定医」「専門医」「指導医」という資格が存在します。
これらの資格は何が違うのでしょうか?それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
認定医とは
認定医は、矯正歯科医療に関して適切な学識、技術、経験を有する者と規定されています。日本矯正歯科学会の認定医になるためには、学会指定研修施設における基本研修と臨床研修からなる5年以上の研修修了と診療活動ならびに学術活動の実績が求められます。
また、資格審査では症例審査に合格することで認定され、5年ごとの資格更新には研修単位取得の実績と更新症例報告等の更新審査に合格する必要があります。
認定医は矯正治療において最低限の知識と技術を持っていると言えるため、矯正歯科医を選ぶ際の一つの目安になります。
専門医とは
専門医は、矯正歯科領域における診断、治療および術後管理に関して高度な医療技能と経験ならびに専門知識を有し、他診療領域の歯科医師または医師ら他職種との連携を図り、標準的な矯正歯科治療を提供する能力を有する者と規定されています。
専門医の資格は、認定医の資格を有していることが前提条件となり、さらに診療活動ならびに学術活動の実績、研修単位の取得などが求められます。資格審査では筆記試験と症例審査に合格することで認定されます。
専門医は認定医よりもさらに高度な知識と技術を持っていると言えるでしょう。現在、歯科医師は日本に約10万人いるとされていますが、矯正歯科専門医の数は約450人程度と非常に少ないのが現状です。
指導医(研修指導医)とは
指導医は、認定医の育成および日本の矯正歯科医療における指導的役割を果たす者と規定されています。研修指導医は、専門医の育成および日本の矯正歯科医療における指導的役割を果たす者とされています。
研修指導医の資格は、専門医の資格を有し、12年以上日本矯正歯科学会会員であり、指導者講習会の受講と研修指導医にふさわしい学術活動の実績などが求められ、資格審査に合格することで認定されます。
指導医は矯正医を教育するための資格であり、最も高いレベルの知識と技術を持っていると言えるでしょう。
矯正歯科医選びで重視すべき5つの資格と診断技術
矯正歯科医を選ぶ際には、資格だけでなく診断技術も重要なポイントとなります。ここでは、特に重視すべき5つの資格と診断技術について詳しく解説します。
1. 日本矯正歯科学会の認定医・専門医資格
まず最も重視すべきは、日本矯正歯科学会の認定医または専門医の資格を持っているかどうかです。これらの資格は、矯正歯科治療に関する専門的な知識と技術を持っていることの証明となります。
特に専門医の資格は、認定医よりもさらに高度な知識と技術が求められるため、より信頼性が高いと言えるでしょう。歯科医師全体(約10万人)の中で専門医は約450人程度しかおらず、非常に希少な存在です。
当院でも日本矯正歯科学会認定医としての専門知識と経験を活かし、患者さん一人ひとりに合った最適な矯正治療を提供しています。
2. セファログラム(頭部X線規格写真)分析技術
矯正治療において非常に重要なのが、セファログラム(頭部X線規格写真)の分析技術です。セファログラムとは、世界中で共通した撮影方法で、顔面と頭部のX線写真から分析・診断を正しく下すために必要なものです。
このセファログラムを使った分析により、上下のあごの大きさとそのズレ、あごのかたち、歯の傾斜角度、口もとのバランスなどを正確に把握することができます。
矯正歯科専門医院では、このセファログラムを治療前・治療後と経時的に撮影することで骨格の成長の方向や量、歯の移動距離などを把握し、客観的な根拠にもとづいた治療を行っています。
セファログラム分析なしに矯正治療を始めることは、海図も見ずに船を出すようなものです。信頼できる矯正歯科医を選ぶ際には、必ずセファログラム分析を行っているかどうかを確認しましょう。
3. 精密検査と診断技術
矯正歯科治療を行うためには、セファログラム以外にも様々な精密検査が必要です。具体的には以下のような検査が重要となります。
- 口腔内検査
- 顎機能と咬合機能の検査
- 顎のプロポーション検査
- 筋機能の検査
- 模型分析
これらの検査結果を詳細に分析した上で診断を行い、治療計画を立案することが重要です。信頼できる矯正歯科医は、これらの精密検査を実施し、その結果を患者さんに分かりやすく説明してくれるはずです。
当院では、これらの精密検査を丁寧に行い、患者さんの状態を正確に把握した上で最適な治療計画を立案しています。また、検査結果や治療計画については、患者さんにも分かりやすく説明することを心がけています。
4. 矯正歯科医の常勤状況
矯正歯科医が常勤しているかどうかも重要なポイントです。一般歯科医院の中には、大学病院などから決まった日時にだけ矯正歯科医が来て治療を行うケースもあります。
このような場合、治療日数が限られていたり、治療の途中で担当医が変わったり、緊急時の対応ができなかったりすることもあり得ます。また、矯正治療に必要な設備や機器が十分に整っていない可能性もあります。
一方、矯正歯科専門医院や矯正歯科医が常勤している医院では、同じ担当医による一貫した治療が受けられるだけでなく、矯正治療に必要な設備や機器も充実しています。
信頼できる矯正歯科医を選ぶ際には、矯正歯科医が常勤しているかどうかを確認することも大切です。
5. 治療計画と費用の明確な説明
信頼できる矯正歯科医は、治療計画や費用について詳細に説明してくれます。具体的には以下のような点について明確な説明があるかどうかを確認しましょう。
- 治療のゴールとそのプロセス
- 治療装置とその効果
- 治療期間
- 第Ⅱ期治療の可能性(子どもの場合)
- 保定、後戻りの可能性
- 治療のメリット・デメリット
- 抜歯・非抜歯について
- 治療費、調節料、支払い方法
- 装置が壊れたときの対応
- 転医あるいは中止する場合の精算
これらの点について詳細な説明がなく、治療を急かされるような場合は注意が必要です。信頼できる矯正歯科医は、患者さんが納得した上で治療を始めることを重視します。
一般歯科と矯正歯科専門医院の違い
矯正治療を受ける際には、一般歯科と矯正歯科専門医院のどちらを選ぶかという選択肢もあります。それぞれにどのような違いがあるのでしょうか。
一般歯科での矯正治療
一般歯科で矯正治療を受ける場合、主に以下のようなパターンがあります。
- 歯科医師(一般歯科医)が矯正治療を行うケース
- 矯正医を一般歯科に招いて矯正治療を行うケース
後者の場合、矯正治療の診断や処置は矯正医が行うため、専門的な知識や経験を持った矯正医に治療をしてもらうことが可能です。近隣に矯正専門クリニックがない場合などはこうした一般歯科を利用するという方法も有効でしょう。
一般歯科で矯正治療を受けるメリットとしては、虫歯や詰め物・被せものの治療、抜歯などの処置を同じ医院で受けられるという点が挙げられます。矯正治療では、虫歯や歯ぐきの炎症がある状態では治療を進めることができないため、これらの治療を同時に行える一般歯科は便利と言えるでしょう。
しかし、一般歯科の場合、矯正治療の専門知識や経験が不足している可能性もあります。特に院長自身が矯正の専門教育を受けていない場合は注意が必要です。
矯正歯科専門医院の特徴
矯正歯科専門医院とは、専門知識と診療技術を有する歯科医が矯正歯科治療だけを行っている診療所のことです。これらの専門医院には矯正歯科治療に特化している歯科医がいて、一人ひとり異なる咬み合わせの状態に適した治療法を選択できることから、症例数は矯正歯科治療を行う一般歯科医院より10倍ほど多いと言われています。
矯正歯科専門医院のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 矯正治療に特化した専門知識と経験
- 矯正治療に必要な設備や機器の充実
- 同じ担当医による一貫した治療
- 緊急時の対応がスムーズ
- 多くの症例経験に基づいた治療
一方、デメリットとしては、虫歯などの一般歯科治療は行わないことが多く、別の医院で治療を受ける必要がある場合があることです。
どちらを選ぶかは患者さんの状況や希望によりますが、矯正治療の質を重視するなら、矯正歯科専門医院や矯正歯科医が常勤している医院を選ぶことをおすすめします。
子どもの矯正と大人の矯正の違いと専門医選び
矯正治療は子どもと大人では適切な時期や治療法が異なります。それぞれの特徴と専門医選びのポイントを見ていきましょう。
子どもの矯正治療の特徴
子どもの矯正治療では、6歳から12歳の「第Ⅰ期」と呼ばれる時期が非常に重要です。この時期は顎の成長を利用した治療が可能であり、将来的な歯並びの問題を予防することができます。
子どもの矯正治療の主な特徴は以下の通りです。
- 顎の成長を利用した治療が可能
- 永久歯が生えそろう前に問題を改善できる
- 将来的な抜歯の必要性を減らせる可能性がある
- 治療期間が比較的短い場合がある
- 第Ⅰ期治療後、永久歯が生えそろった段階で第Ⅱ期治療が必要な場合もある
子どもの矯正治療を担当する歯科医を選ぶ際には、以下のような点に注目するとよいでしょう。
- 小児矯正の経験が豊富であること
- 成長発育に関する知識が豊富であること
- 子どもとのコミュニケーション能力が高いこと
- 保護者への説明が丁寧であること
- 定期的な経過観察を行っていること
当院では、お子様の成長段階に合わせた適切な矯正治療を提供しています。特に第Ⅰ期治療では、顎の成長を利用して効果的に歯並びや咬み合わせの問題を改善することを目指しています。
大人の矯正治療の特徴
大人の矯正治療では、すでに顎の成長が完了しているため、子どもの矯正治療とは異なるアプローチが必要となります。
大人の矯正治療の主な特徴は以下の通りです。
- 顎の成長を利用した治療ができない
- 治療期間が比較的長くなる傾向がある
- 歯周病など他の口腔内の問題を考慮する必要がある
- 審美性を重視した装置(セラミック装置やマウスピース型装置など)を選択できる
- 社会生活への影響を考慮した治療計画が必要
大人の矯正治療を担当する歯科医を選ぶ際には、以下のような点に注目するとよいでしょう。
- 大人の矯正治療の経験が豊富であること
- 様々な矯正装置(セラミック装置、マウスピース型装置など)に対応していること
- 歯周病など他の口腔内の問題にも対応できること
- 患者のライフスタイルに合わせた治療計画を提案できること
- 治療のメリット・デメリットを明確に説明してくれること
当院では、大人の患者さんに対しても、ライフスタイルや希望に合わせた矯正治療を提供しています。特にインビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正装置)は、従来のワイヤー矯正装置に比べて目立ちにくく、痛みや違和感も感じにくい傾向があるため、社会人の方にも人気です。
まとめ:理想の矯正歯科医選びのポイント
矯正歯科医選びは、治療の成功を左右する重要な要素です。この記事でご紹介した5つの資格と診断技術を参考に、信頼できる矯正歯科医を見つけていただければ幸いです。
最後に、理想の矯正歯科医選びのポイントをまとめておきます。
- 日本矯正歯科学会の認定医または専門医の資格を持っていること
- セファログラム(頭部X線規格写真)分析を行っていること
- 精密検査と診断を丁寧に行っていること
- 矯正歯科医が常勤していること
- 治療計画と費用について詳細に説明してくれること
- コミュニケーションがとりやすいこと
- 治療中のトラブルに対応してくれること
- 通いやすい場所にあること
矯正治療は長期間にわたるものですので、信頼関係を築ける歯科医を選ぶことが大切です。初診時の対応や説明の丁寧さなども重要なポイントとなるでしょう。
当院では、日本矯正歯科学会認定医としての専門知識と経験を活かし、患者さん一人ひとりに合った最適な矯正治療を提供しています。矯正治療についてご不明な点やご相談がありましたら、お気軽にBelle歯科・矯正歯科までお問い合わせください。
皆様が自信を持って笑える健康で美しい口元の実現を目指し、全力でサポートいたします。
著者情報
Belle歯科・矯正歯科 院長 竹内優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会