マウスピース矯正とは?基本的な仕組みと特徴
マウスピース矯正は、透明な樹脂でできたマウスピースを使って歯を少しずつ動かしていく矯正方法です。従来のワイヤーやブラケットを使用せず、定期的にマウスピースを交換することで徐々に理想の歯並びへと近づけていきます。
私が日々の臨床で実感するのは、マウスピース矯正を希望される患者さんが年々増加していることです。特に社会人の方や人前に立つお仕事をされている方に人気があります。
マウスピース矯正の仕組みは、歯根膜という組織を介して歯に力をかけ、少しずつ移動させるというものです。歯は歯槽骨という骨に直接固定されているわけではなく、歯根膜によって支えられています。
マウスピースによって継続的に圧力をかけると、圧力がかかる側の歯根膜は圧迫され、反対側は引っ張られます。この作用によって骨の代謝が促進され、少しずつ歯が動いていくのです。
マウスピース矯正の4つのメリット
マウスピース矯正には、従来のワイヤー矯正と比較して多くのメリットがあります。患者さんが実際に体感できる利点をご紹介します。
1. 見た目が目立たない
マウスピース矯正の最大の特徴は、透明な装置を使用するため、装着していてもほとんど目立たないことです。人前に立つ機会が多い方や、ビジネスシーンでの印象を気にされる方にとって、これは大きなメリットとなります。
私のクリニックでも、「会議中や接客時に矯正装置が目立つのが心配」という理由でマウスピース矯正を選ばれる方が非常に多いです。透明なマウスピースなら、会話中も自信を持って笑顔でいられますね。
2. 取り外しができる便利さ
マウスピース矯正は自分で取り外すことができます。食事や歯磨きの際に外せるため、食べ物の制限がなく、口腔衛生も維持しやすいのが特徴です。
ワイヤー矯正では食べづらい食品があったり、装置に食べ物が挟まったりする心配がありますが、マウスピース矯正ならそういった悩みから解放されます。ただし、1日20時間以上の装着が必要なため、自己管理能力が求められる点は理解しておきましょう。
3. 痛みや違和感が少ない
マウスピース矯正は、ワイヤー矯正と比較して痛みや違和感が少ない傾向にあります。金属製のブラケットやワイヤーがないため、口内の傷や違和感が大幅に軽減されます。
新しいマウスピースに交換した直後は若干の圧迫感を感じることがありますが、多くの患者さんは数日で慣れると言われています。痛みに敏感な方や、快適に矯正治療を進めたい方には特におすすめです。
4. 口腔衛生を保ちやすい
マウスピース矯正の大きな利点として、口腔衛生を保ちやすいことが挙げられます。装置を外して通常通り歯磨きができるため、矯正中でも虫歯や歯周病のリスクを抑えることができます。
ワイヤー矯正では装置の周りの清掃が難しく、虫歯や歯肉炎のリスクが高まることがありますが、マウスピース矯正ならその心配が少ないのです。口腔内の健康を維持しながら矯正治療を進められる点は、長期的な口腔健康にとって非常に重要です。
マウスピース矯正の4つのデメリット
メリットが多いマウスピース矯正ですが、もちろんデメリットも存在します。治療を検討される際には、これらの点もしっかりと理解しておくことが大切です。
1. 自己管理が必要
マウスピース矯正の最大のデメリットは、装着時間を自分で管理する必要があることです。効果を得るためには1日20時間以上の装着が推奨されており、これを守れないと治療効果が十分に得られません。
「自分で取り外せる」というメリットの裏返しとして、装着の徹底が患者さん自身の意志に委ねられます。食事や歯磨き以外の時間はしっかりと装着する自己管理能力が求められるのです。
2. 複雑な症例には不向き
マウスピース矯正は、すべての症例に適しているわけではありません。大きな歯の移動や、複雑な回転、重度の噛み合わせの問題などは、従来のワイヤー矯正の方が効果的に治療できることがあります。
特に歯の回転や垂直方向の移動については、マウスピース単独での治療が難しいケースがあります。症例によっては、部分的にワイヤー矯正を併用したり、治療期間が長くなったりする可能性があることを理解しておきましょう。
3. 装着中の飲食制限
マウスピース装着中は、水以外の飲食ができません。コーヒーや紅茶、ジュースなどの着色性の飲み物や、熱い飲み物を飲む際にはマウスピースを外す必要があります。
頻繁に飲み物を口にする習慣がある方は、装着時間が確保できなくなる可能性があります。また、マウスピースを外して飲食後、すぐに装着し直すためには、外出先でも歯磨きが必要になることも考慮しておくべきでしょう。
4. 医師の経験と技術に左右される
マウスピース矯正の治療効果は、担当医師の知識と経験に大きく左右されます。マウスピース矯正は比較的新しい技術であり、医師によって治療計画の立て方や経験値に差があります。
同じインビザラインというシステムを使用していても、治療計画や治療方針は歯科医師によって大きく異なるため、同じような矯正効果が得られるわけではありません。経験豊富な矯正専門医を選ぶことが、治療成功の鍵となります。
マウスピース矯正の治療期間と費用
マウスピース矯正を検討される際に、多くの患者さんが気になるのが治療期間と費用です。これらは症例の複雑さによって大きく異なりますが、一般的な目安をご紹介します。
治療期間の目安
マウスピース矯正の治療期間は、症例の難易度によって変わります。軽度の歯並びの乱れであれば1年以内、中程度の症例で1年半〜2年、複雑な症例では2〜3年程度かかることが一般的です。
ただし、治療期間は患者さん自身の装着時間の遵守度合いによっても大きく左右されます。1日20時間以上の装着を徹底できれば、予定通りに治療が進みますが、装着時間が不十分だと治療期間が延びてしまう可能性があります。
費用の相場
マウスピース矯正の費用は、全体矯正で60万円〜100万円程度、部分矯正であれば10万円〜40万円程度が一般的な相場です。これらの費用には、初診料、検査料、マウスピース代、調整料などが含まれています。
費用は医院によって異なりますので、複数の医院で相談することをおすすめします。また、分割払いやデンタルローンなどの支払い方法を用意している医院も多いので、支払い計画についても相談してみるとよいでしょう。
なお、マウスピース矯正は自由診療となるため、保険適用外です。治療費は全額自己負担となりますが、医療費控除の対象となる場合があります。
マウスピース矯正の効果を最大化するポイント
マウスピース矯正で最大限の効果を得るためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらを守ることで、より効率的に、そして確実に理想の歯並びに近づけることができます。
装着時間の厳守
マウスピース矯正の成功の鍵は、1日20時間以上の装着時間を守ることです。食事と歯磨きの時間以外は常に装着するよう心がけましょう。装着時間が不足すると、歯の移動が予定通り進まず、治療期間が延びてしまいます。
特に新しいマウスピースに交換した直後は、しっかりと装着することが重要です。この時期に十分な装着時間を確保できないと、マウスピースと歯の間にズレが生じ、治療計画通りに歯が動かなくなる可能性があります。
定期的な通院と調整
マウスピース矯正は自己管理型の治療ですが、定期的な通院も非常に重要です。通常、4〜8週間ごとの通院が必要で、歯の動きを確認しながら治療を進めていきます。
予定された通院日をキャンセルしたり先延ばしにしたりすると、問題が早期に発見できず、治療計画の修正が遅れる可能性があります。定期的な通院で歯科医師のチェックを受けることで、より効率的に治療を進めることができます。
口腔衛生の徹底
マウスピース矯正中は、通常以上に口腔衛生に気を配ることが大切です。マウスピースを装着する前には必ず歯磨きをし、マウスピース自体も定期的に洗浄しましょう。
歯磨きが不十分なままマウスピースを装着すると、歯の表面に細菌やプラークが留まりやすくなり、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。マウスピースの清潔さを保つことも、治療を快適に進めるためには欠かせません。
まとめ:マウスピース矯正は誰に向いているのか
マウスピース矯正のメリットとデメリットを踏まえ、どのような方に向いている治療法なのかをまとめてみましょう。
マウスピース矯正は、見た目を気にする社会人の方や、人前に立つ機会の多い方に特に適しています。また、自己管理能力が高く、装着時間をしっかりと守れる方にも向いています。軽度から中程度の歯並びの乱れであれば、マウスピース矯正で十分な効果が期待できます。
一方で、複雑な噛み合わせの問題や大きな歯の移動が必要な場合、あるいは自己管理が難しい方には、従来のワイヤー矯正の方が適している可能性があります。
最終的には、矯正専門医との相談を通じて、ご自身の症例や生活スタイルに合った矯正方法を選ぶことが大切です。Belle歯科・矯正歯科では、一人ひとりの患者さんに最適な矯正プランをご提案しています。
マウスピース矯正に興味をお持ちの方は、まずは矯正相談にお越しください。あなたの歯並びの状態を詳しく診断し、最適な治療法をご提案いたします。
美しい歯並びは、自信に満ちた笑顔をもたらします。私たちBelle歯科・矯正歯科は、あなたの理想の笑顔を実現するお手伝いをさせていただきます。
詳しい情報や矯正相談のご予約は、Belle歯科・矯正歯科のウェブサイトをご覧ください。皆様のご来院を心よりお待ちしております。
著者情報
Belle歯科・矯正歯科 院長 竹内優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会