矯正治療の選び方〜自分に合った方法を見つけるポイント
歯並びを整えたいと思ったとき、多くの方が「どの矯正方法を選べばいいのだろう?」と悩まれます。特に最近では、従来のワイヤー矯正だけでなく、マウスピース矯正という選択肢も広く知られるようになりました。
矯正治療は数年にわたる長期的な治療です。自分に合った方法を選ぶことが、快適な治療生活と理想的な結果につながります。
この記事では、矯正専門医の立場から、ワイヤー矯正とマウスピース矯正それぞれの特徴や適応症例について詳しく解説します。あなたにぴったりの矯正方法を見つけるお手伝いができれば幸いです。
どうですか?あなたも歯並びについて何か気になることはありませんか?
矯正治療の基本〜不正咬合とは何か
矯正治療とは、正しく咬み合っていない歯並びを調整する歯科治療です。歯や顎の骨にゆっくりと力をかけ、歯並びを整えていきます。
歯並びの不具合(不正咬合)を放置すると、様々な問題が生じる可能性があります。例えば、食べ物が咬みにくくなったり、歯周病のリスクが高まったり、口臭の原因になったりすることがあります。
また、顎関節への負担が増大し、顎関節症を引き起こすケースもあります。さらに深刻な場合は、歯の脱落や全身疾患につながるリスクも考えられるのです。
主な不正咬合には以下の3種類があります。
- 上顎前突(出っ歯):上顎の前歯が下顎の前歯よりも前に出ており、上下の歯が咬み合っていない状態
- 下顎前突(受け口):下顎の前歯が上顎の前歯よりも前に出ており、上下の歯が咬み合っていない状態
- 開咬:前歯が咬み合っておらず、奥歯の数本に負担がかかりやすい歯並び
矯正治療の必要性は、専門家による詳細な検査と分析によって判断されます。自分で判断するのではなく、まずは矯正歯科医に相談することをおすすめします。

ワイヤー矯正とは〜特徴とメリット・デメリット
ワイヤー矯正は最も一般的な矯正方法です。歯の表面にブラケットと呼ばれる装置を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を動かしていきます。
ワイヤー矯正には表側矯正、裏側矯正、ホワイトワイヤー矯正などのバリエーションがあります。それぞれ見た目や装着感が異なりますが、基本的な治療原理は同じです。
ワイヤー矯正のメリット
- 幅広い症例に対応可能:あらゆる不正咬合に対応できる万能な治療法です
- 確実な治療効果:複雑な歯の動きにも対応でき、確実に歯を動かせます
- 治療実績が豊富:長年の実績があり、多くの症例データがあります
- 自己管理の負担が少ない:装置を取り外す必要がないため、患者さん自身の管理が比較的簡単です
ワイヤー矯正のデメリット
一方で、ワイヤー矯正にはいくつかのデメリットもあります。
- 見た目が目立つ:特に表側矯正では金属製の装置が見えるため、見た目を気にする方には抵抗があるかもしれません
- 口内炎のリスク:ワイヤーにより唇など粘膜に傷をつけることがあります
- 装置装着直後の痛み:装置装着直後から数日間は痛みを感じることがあります
- 歯磨きが難しい:装置により歯面清掃が難しくなるため、虫歯や歯周病、口臭のリスクが高まる可能性があります
- 食事制限:粘性の高い食べ物(ガム、キャラメル、もちなど)は装置が外れる可能性があるため注意が必要です
ワイヤー矯正は特に複雑な歯並びの症例や、大きく歯を動かす必要がある場合に効果を発揮します。歯科医師による適切な診断と治療計画のもとで行われることで、確実な効果が期待できるのです。
マウスピース矯正とは〜特徴とメリット・デメリット
マウスピース矯正は、透明なプラスチック製のマウスピースを使用して歯を動かす矯正方法です。代表的なものにインビザラインがあり、2〜3週間ごとに少しずつ形状の異なるマウスピースに交換しながら、徐々に歯を理想的な位置に動かしていきます。
マウスピース矯正のメリット
- 目立ちにくい:透明で薄いマウスピースは、装着していることが他人にはわかりにくいです
- 取り外し可能:食事や歯磨きの際にマウスピースを取り外せるため、口腔ケアがしやすいです
- 金属アレルギーの心配なし:金属を使用しないため、金属アレルギーのある方でも安心して治療できます
- 口内炎のリスクが低い:ワイヤーにより粘膜が傷つくことがありません
- 痛みが少ない:ワイヤー矯正と比較して痛みが少ないとされています
特に見た目を気にする方や、仕事で人と接する機会が多い方にとって、マウスピース矯正の「目立ちにくさ」は大きなメリットとなります。
マウスピース矯正のデメリット
マウスピース矯正にも、いくつかの注意点があります。
- 適応症例が限られる:症例によっては適応外の場合があります
- 自己管理が必要:1日20時間以上の装着が必要で、装着時間が不足すると治療効果が低下します
- マウスピースの手入れが必要:ご自身によるマウスピースの手入れが必要です
- 提供できる歯科医院が限られる:インビザラインなどは専用のライセンスが必要なため、提供できる歯医者が限られています
マウスピース矯正は自己管理が非常に重要です。決められた時間しっかり装着しないと、治療効果が十分に得られない場合もあります。自分自身で責任をもって管理できる方に向いている治療法といえるでしょう。
あなたは自分で毎日きちんと管理できるタイプですか?
ワイヤー矯正とマウスピース矯正の比較〜どちらが自分に合っているか
ワイヤー矯正とマウスピース矯正、どちらを選ぶべきか迷っている方も多いでしょう。ここでは、主な観点から両者を比較してみます。
見た目の比較
見た目を重視する場合、マウスピース矯正が圧倒的に有利です。透明なマウスピースは数メートル離れると装着していることがほとんど分からないほど目立ちません。
一方、ワイヤー矯正は金属製のブラケットとワイヤーが目立ちます。ただし、白いセラミック製のブラケットや裏側矯正を選べば、見た目の負担は軽減できます。
治療効果の比較
治療効果を最優先に考えるなら、ワイヤー矯正が安心です。特に以下のような症例ではワイヤー矯正の方が効果的です。
- 大きく歯を動かす必要がある場合
- 奥歯を含めた全体的な咬み合わせの調整が必要な場合
- 歯を回転させるなど複雑な動きが必要な場合
- 抜歯を伴う治療が必要な場合
一方、マウスピース矯正は軽度〜中度の歯並び改善には十分対応可能です。技術の進歩により適応範囲は広がってきていますが、すべての症例に対応できるわけではありません。
通院頻度と治療期間
通院頻度は、ワイヤー矯正が約4週に1回、マウスピース矯正が約6〜8週に1回が一般的です。忙しい方にとっては、通院回数が少ないマウスピース矯正が便利かもしれません。
治療期間は症例によって大きく異なりますが、一般的にワイヤー矯正が1〜3年程度、マウスピース矯正が1〜2年程度と言われています。ただし、マウスピース矯正は装着時間が不足すると治療期間が延びる可能性があります。
費用の比較
矯正治療は基本的に自費診療となるため、費用も重要な判断材料です。一般的な相場は以下の通りです。
- ワイヤー矯正(表側):70〜100万円程度
- ワイヤー矯正(裏側):100〜140万円程度
- マウスピース矯正(全体):70〜110万円程度
- マウスピース矯正(部分):30〜60万円程度
費用は医院によって異なりますので、詳細は各医院にお問い合わせください。

自分に合った矯正治療の選び方
矯正治療は一人ひとりの状態や生活スタイル、希望によって最適な選択肢が異なります。以下のポイントを参考に、自分に合った方法を見つけましょう。
歯並びの状態で選ぶ
まず最も重要なのは、あなたの歯並びの状態です。重度の不正咬合や複雑な歯の移動が必要な場合は、ワイヤー矯正が適している可能性が高いです。軽度〜中度の不正咬合であれば、マウスピース矯正も選択肢に入ります。
専門医による診断を受け、あなたの症例にどちらの治療法が適しているか、しっかり相談することが大切です。
ライフスタイルで選ぶ
あなたの生活スタイルも重要な判断材料です。
- 仕事や学校で見た目を気にする方:マウスピース矯正や裏側矯正がおすすめ
- 自己管理が苦手な方:取り外しの必要がないワイヤー矯正がおすすめ
- 忙しくて通院回数を減らしたい方:通院頻度が少ないマウスピース矯正がおすすめ
- 食事を楽しみたい方:食事の際に取り外せるマウスピース矯正がおすすめ
自分のライフスタイルに合った治療法を選ぶことで、ストレスなく治療を続けることができます。
セカンドオピニオンを活用する
矯正治療は長期間にわたり、費用も高額になります。一つの医院の意見だけでなく、複数の医院でセカンドオピニオンを求めることも大切です。
当院でも、患者様の症状だけでなく、普段の生活や将来の計画なども含め、じっくりとお話をしたうえで、最適な治療計画を提案させていただいています。当院の後でセカンドオピニオンやサードオピニオンを聞きに行かれても構いませんし、当院をセカンドオピニオン、サードオピニオンとしてご活用いただいても構いません。
大切なのは、あなた自身が納得して治療を始められることです。
まとめ〜あなたに合った矯正治療を見つけるために
この記事では、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の特徴や違い、それぞれのメリット・デメリットについて解説しました。
ワイヤー矯正は幅広い症例に対応でき、確実な治療効果が期待できる一方で、見た目が目立つというデメリットがあります。マウスピース矯正は目立ちにくく取り外しが可能という大きなメリットがありますが、適応症例が限られ、自己管理が必要です。
どちらの治療法が優れているということではなく、あなたの歯並びの状態やライフスタイル、希望に合った方法を選ぶことが大切です。
歯並びのことでお悩みの際は、ぜひ専門医に相談してください。Belle歯科・矯正歯科では、患者様一人ひとりに合った最適な矯正治療をご提案いたします。
あなたの素敵な笑顔のために、私たちができることがきっとあります。

著者情報
Belle歯科・矯正歯科 院長 竹内優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会

