なぜ同じように歯磨きしているのに虫歯になる人とならない人がいるのか
「毎日しっかり歯磨きしているのに、どうして虫歯になってしまうんだろう」
そんな疑問を抱いたことはありませんか?実は、虫歯のなりやすさは歯磨きの丁寧さだけでは決まりません。お口の中の環境、特に唾液の状態が大きく影響しているのです。同じように歯磨きをしていても、唾液の分泌量や質、口腔内の細菌数によって、虫歯リスクは大きく変わってきます。
唾液には、お口の中を洗浄する働きや、酸性に傾いた環境を中和する力、さらには歯を強くする再石灰化を促進する働きなど、虫歯予防に欠かせない重要な役割があります。しかし、この唾液の働きには個人差があり、それが虫歯のなりやすさの違いを生んでいるのです。

唾液検査で明らかになる3つの虫歯リスク要因
唾液検査は、わずか20分程度で完了する簡単な検査です。
味のないガムを5分間噛んで唾液を採取するだけで、あなたの虫歯リスクを科学的に把握できます。この検査で明らかになるのは、「唾液分泌量」「唾液緩衝能」「虫歯菌の数」という3つの重要な要因です。それぞれが虫歯の発生に深く関わっており、これらを知ることで効果的な予防策を立てることができます。
唾液分泌量が虫歯リスクを左右する理由
唾液には、お口の中の汚れを洗い流す自浄作用があります。食事をすると、食べかすや細菌がお口の中に残りますが、唾液が十分に分泌されていれば、これらを洗い流してくれるのです。また、唾液に含まれるカルシウムやリンなどのミネラル成分が、歯の表面を修復する再石灰化を促進します。
しかし、唾液の分泌量が少ないと、これらの働きが十分に機能しません。お口の中が乾燥すると細菌が増殖しやすくなり、虫歯だけでなく歯周病や口臭の原因にもなります。ストレスや加齢、薬の副作用などによって唾液分泌量は減少することがあるため、注意が必要です。
唾液緩衝能とは何か
食事をすると、お口の中は酸性に傾きます。
この酸性状態が続くと、歯の表面のエナメル質が溶け出す「脱灰」が起こり、虫歯の原因となります。唾液緩衝能とは、この酸性に傾いたお口の中を中和させ、中性に戻す力のことです。唾液緩衝能が高い人は、食後すぐにお口の中が中性に戻るため、虫歯になりにくいのです。
唾液検査では、試験紙に唾液をつけて色の変化を見ることで、この緩衝能の強さを判定します。緩衝能が弱い場合は、食後の歯磨きやうがいをより丁寧に行う必要があります。
虫歯菌の数を知ることの重要性
お口の中には数百種類以上の細菌が存在していますが、特に虫歯の発生と進行に関わっているのが「ミュータンス菌」と「ラクトバチラス菌」です。ミュータンス菌は虫歯の発生に、ラクトバチラス菌は虫歯の進行に大きく関与しています。
唾液検査では、舌に試験棒をつけて細菌を採取し、数日間培養することでこれらの菌の数を調べます。細菌数が多いほど虫歯になりやすく、また虫歯が進行しやすい環境にあると言えます。細菌数が多い場合は、フッ素やキシリトールの使用、定期的な歯科医院でのクリーニングが特に重要になります。
虫歯が発生するメカニズム〜4つの要因と時間の関係
虫歯は単一の原因で発生するわけではありません。
「歯の質」「虫歯菌」「糖」という3つの要素が重なり、そこに「時間」という要因が加わることで虫歯が発生します。この4つの要因を理解することが、効果的な虫歯予防の第一歩となります。
歯の質は個人差があり、生まれつき歯が弱い人もいれば強い人もいます。母親のおなかにいる時から小学校低学年までの間に歯は形成されるため、この時期の栄養状態や環境が歯の質に影響します。また、生えたての歯は表面のエナメル質が未成熟で虫歯になりやすいという特徴があります。
虫歯菌は、プラーク(歯垢)の中に存在し、食べ物の糖質をエネルギー源として酸を生成します。この酸が歯を溶かすことで虫歯が発生するのです。特に砂糖は虫歯菌が好む糖質であり、甘いお菓子を頻繁に食べる習慣は虫歯リスクを高めます。
そして、時間の要因も見逃せません。食後に歯磨きをせずに放置していると、お口の中が酸性の状態が続き、歯が溶け続けてしまいます。通常、唾液の働きによってお口の中は中性に戻りますが、間食が多い場合やだらだらと長時間食べ続ける習慣があると、酸性の時間が長くなり虫歯のリスクが高まります。

唾液検査の具体的な流れと注意点
唾液検査は痛みもなく、短時間で完了する手軽な検査です。
検査前1時間は飲食・喫煙・歯磨きを控える必要があります。また、殺菌剤が配合されたマウスウォッシュや洗口液は、検査前12時間は使用を控えてください。運動も唾液の分泌量に影響するため、検査前は控えることが推奨されます。
検査はまず、リラックスした状態で味のないガムを5分間噛み、唾液を採取することから始まります。採取した唾液の量を測定することで、唾液分泌量がわかります。次に、採取した唾液を試験紙につけて、唾液緩衝能(中和力)を調べます。試験紙の色の変化によって、緩衝能の強さを判定できます。
さらに、舌に棒状の試験紙をつけて口の中の細菌を採取します。採取した細菌は数日間培養され、ミュータンス菌とラクトバチラス菌の数を調べます。培養が必要なため、検査結果は後日お知らせすることになります。
費用は保険適用外のため歯科医院によって異なりますが、一般的には3,000〜5,000円程度で受けられることが多いです。検査結果をもとに、一人ひとりに合った予防プログラムを提案してもらえます。
唾液検査の結果を活かした効果的な虫歯予防法
唾液検査の結果がわかれば、自分に合った予防法が見えてきます。
唾液分泌量が少ない場合は、水分補給を意識的に行い、ガムを噛んで唾液の分泌を促すことが有効です。また、ストレス管理や十分な睡眠も唾液分泌量の改善につながります。ドライマウス対策として、保湿ジェルや人工唾液の使用も検討できます。
唾液緩衝能が弱い場合は、食後すぐの歯磨きやうがいが特に重要になります。酸性飲料やスポーツドリンクの頻繁な摂取は控え、飲んだ後は水で口をすすぐ習慣をつけましょう。また、フッ素配合歯磨剤の使用は、歯の再石灰化を促進し、酸に強い歯を作るのに役立ちます。
虫歯菌の数が多い場合は、プラークコントロールが最優先です。毎日の丁寧な歯磨きに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシを使った歯と歯の間の清掃が欠かせません。定期的な歯科医院でのプロフェッショナルクリーニング(PMTC)も効果的です。
フッ素の効果的な使用方法
フッ素は虫歯予防において科学的に効果が証明されている方法です。
フッ素配合歯磨剤の使用は、歯の再石灰化を促進し、エナメル質を強化します。6歳以上の場合、フッ素濃度1,000〜1,500ppmの歯磨剤を使用することが推奨されています。歯磨き後のすすぎは少量の水で1回程度にとどめることで、フッ素の効果を最大限に引き出せます。
歯科医院でのフッ化物塗布も定期的に受けることで、より高い予防効果が期待できます。特に虫歯リスクが高い方や、お子様の虫歯予防には効果的です。
食生活の見直しポイント
砂糖の摂取を控えることは虫歯予防の基本ですが、完全に避けることは現実的ではありません。大切なのは、摂取の仕方です。間食の回数を減らし、だらだら食べを避けることで、お口の中が酸性に傾く時間を短くできます。
また、食事の最後にお茶や水を飲む習慣をつけると、お口の中の糖分を洗い流す効果があります。キシリトール入りのガムを噛むことも、唾液分泌を促進し、虫歯予防に役立ちます。
こんな人は特に唾液検査を受けるべき
虫歯予防は全ての人に必要ですが、特に以下のような方には唾液検査が強く推奨されます。
毎日歯磨きをしているのに虫歯になりやすい方は、唾液の状態や細菌数に問題がある可能性があります。唾液検査によって原因を特定できれば、効果的な対策を立てられます。小さい頃から虫歯が多い方も、体質的な要因があるかもしれません。
間食が多い方や、砂糖入りのコーヒーや甘い飲み物をよく飲む方も要注意です。スポーツドリンクは健康的なイメージがありますが、実は糖分が多く、酸性度も高いため、頻繁に飲むと虫歯リスクが高まります。
口呼吸をする習慣がある方は、お口の中が乾燥しやすく、唾液の働きが低下します。詰め物や被せ物がある方、歯並びが悪くて歯磨きがしにくい方も、虫歯リスクが高いため、定期的な検査と予防ケアが重要です。
また、乳歯や永久歯が生えたばかりのお子様は、歯の質が未成熟で虫歯になりやすい時期です。この時期に唾液検査を受けて適切な予防策を始めることで、将来の虫歯リスクを大きく減らせます。

唾液の持つ驚くべき健康維持機能
唾液は虫歯予防だけでなく、お口全体の健康を守る重要な役割を担っています。
唾液には消化酵素としての働きもあり、食べ物の消化を助けます。また、お口の中の汚れを洗い流す自浄作用、歯や粘膜を保護する働き、細菌の増殖を抑える抗菌作用など、多岐にわたる機能があります。
唾液に含まれるペリクルという唾液タンパクは、食品によって歯や粘膜が傷つかないように保護する役割を果たします。また、ラクトフェリンなどの抗菌物質が、細菌の働きを抑制し、お口の中を清潔に保ちます。
さらに、唾液の緩衝作用によって酸性に傾いたお口の中を中和し、脱灰を防ぎます。そして、脱灰が起きた歯質を修復する再石灰化を促進する働きもあります。このように、唾液はお口の健康を守るために欠かせない存在なのです。
唾液分泌量が減少すると、虫歯だけでなく歯周病や口臭の原因にもなります。特にストレスが多い現代社会では、ストレスによって交感神経に影響が及び、唾液分泌量が減少しやすくなります。ドライマウスの原因はさまざまですが、ストレスも大きな要因の一つです。
まとめ〜唾液の力を最大限に活かして虫歯を防ぐ
虫歯予防において、唾液の役割は想像以上に大きいものです。
唾液検査を受けることで、自分のお口の中の状態を科学的に把握でき、一人ひとりに合った効果的な予防法を見つけることができます。唾液分泌量、唾液緩衝能、虫歯菌の数という3つの要因を知ることが、虫歯予防の第一歩となります。
検査結果に基づいて、フッ素の使用、食生活の見直し、適切な歯磨き習慣、定期的な歯科医院でのクリーニングなど、自分に必要な予防策を実践していくことが大切です。虫歯は予防できる病気です。唾液の力を最大限に活かし、健康な歯を守っていきましょう。
Belle歯科・矯正歯科では、唾液検査をはじめとする予防歯科に力を入れています。日本矯正歯科学会認定医としての専門知識と経験を活かし、患者様一人ひとりのお口の状態に合わせた最適な予防プログラムをご提案しています。10年後、20年後も健康な歯で笑顔でいられるよう、私たちが全力でサポートいたします。
詳しい検査内容や予防プログラムについては、Belle歯科・矯正歯科までお気軽にご相談ください。神戸市西区西神南で、皆様のお口の健康をお守りします。

著者情報
Belle歯科・矯正歯科 院長 竹内優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会

