矯正治療後の「後戻り」とは?
矯正治療を終えて美しい歯並びを手に入れた喜びは、何ものにも代えがたいものです。
しかし、治療が終了してから数年が経過すると「あれ、少し歯が動いてきたかも…」と感じる方がいらっしゃいます。これが「後戻り」と呼ばれる現象です。矯正治療によって整えられた歯並びが、治療前の位置に戻ろうとする動きのことを指します。
歯は歯周靭帯という組織で顎の骨と結合しており、矯正治療で歯を動かすとこの靭帯が引き伸ばされた状態になります。治療直後は歯の周囲の骨が安定していないため、歯が非常に動きやすい状態にあるのです。そのため、適切な保定を行わないと治療前の位置に戻ろうとする力が働いてしまいます。
後戻りはどのような矯正方法でも起こりうる自然な反応であり、ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも同様です。大切なのは、後戻りが起こるメカニズムを理解し、適切な対策を講じることです。

後戻りが起こる5つの主な原因
1. リテーナー(保定装置)の装着不足
後戻りの最も多い原因です。
矯正治療終了後は、リテーナーと呼ばれる保定装置を使用して歯の位置を安定させる必要があります。治療直後は1日20時間以上の装着が推奨されており、食事と歯磨きの時間以外は常に装着するイメージです。この装着時間を守らないと、少しずつ歯が元の位置に戻ってしまいます。
「装着が面倒になった」「忙しくて忘れてしまった」という理由で装着時間が不足し、後戻りが進んでしまうケースを臨床現場で多く見かけます。リテーナーの装着は、美しい歯並びを維持するための最も重要な習慣なのです。
2. 舌の癖(舌突出癖)
舌で前歯を押す癖や、飲み込む時に舌を前に出す癖は、前歯を徐々に前方に押し出してしまいます。
特に矯正直後は歯が動きやすい状態なので、こうした癖の影響を受けやすいのです。正しい舌の位置は、上顎の前歯の裏側あたりに軽く触れている状態です。日常的に意識して、舌の位置を正しく保つことが大切です。
舌の癖が強い場合は、矯正治療前に舌癖の改善トレーニングを行うこともあります。舌の位置を意識するだけでも、徐々に改善していくことができるでしょう。
3. 口呼吸の習慣
慢性的な鼻詰まりなどが原因で口呼吸の習慣がある場合、口周りの筋肉のバランスが崩れ、歯並びに悪影響を及ぼします。
口呼吸は歯並びだけでなく、全身の健康にも関わる重要な問題です。鼻呼吸を心がけることで、口周りの筋肉のバランスが整い、歯並びの安定にも繋がります。鼻詰まりが慢性的な場合は、耳鼻科での治療も検討してみてください。
4. 歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりは、歯や顎の骨に大きな負荷をかけます。
特に就寝中に無意識で行っていることが多く、自分では気づきにくい習慣です。歯ぎしりや食いしばりがある場合、ナイトガードと呼ばれる装置を使用することで、歯への負担を軽減することができます。
5. 加齢による歯の変化
年齢を重ねるにつれて、歯を支える骨(歯槽骨)が減少したり、奥歯がすり減ったりすることで、噛み合わせが変化します。
これにより歯並びが少しずつ変わっていくことがあります。加齢による変化は誰にでも起こるものですが、適切なケアを続けることで、その影響を最小限に抑えることができます。定期的なメンテナンスで歯の健康を保つことが大切です。

後戻りを防ぐための5つの生活習慣
1. リテーナーの使用時間を厳守する
保定装置であるリテーナーは、歯を安定させるための大切な装置です。
初期は1日20時間程度の装着が必要で、徐々に就寝時のみに移行していきます。歯科医師の指示に従って着用を続けましょう。矯正後1年目は一日中、矯正後2年目以降は夜間の就寝時という段階的な着用が一般的です。
リテーナーを清潔に保つためには、毎日のブラッシングや適切な洗浄剤を使用しましょう。また、リテーナーが破損した場合や適切にフィットしなくなった場合は、早めに歯科医師に相談しましょう。
2. 舌の位置を正しく保つ
舌の正しい位置を意識することが重要です。
正しい舌の位置は、上顎の前歯の裏側あたりに軽く触れている状態です。無意識に舌で歯を押す癖がある場合は、日常的に舌の位置を意識して改善していきましょう。舌癖が強い場合は、MFT(口腔筋機能療法)と呼ばれるトレーニングを行うことも効果的です。
3. 鼻呼吸を心がける
口呼吸の習慣がある場合は、鼻呼吸に切り替えることが大切です。
鼻呼吸を心がけることで、口周りの筋肉のバランスが整い、歯並びの安定にも繋がります。鼻詰まりが慢性的な場合は、耳鼻科での治療も検討してみてください。就寝時に口が開いてしまう場合は、口閉じテープなどを活用する方法もあります。
4. 歯ぎしり・食いしばりへの対策
歯ぎしりや食いしばりがある場合は、ナイトガードの使用を検討しましょう。
ナイトガードは就寝中に装着することで、歯への負担を軽減する装置です。また、日中に食いしばりの癖がある場合は、意識的にリラックスして顎の力を抜くことを心がけましょう。ストレスが原因となっていることも多いため、ストレス管理も重要です。
5. 定期的な歯科検診を受ける
矯正治療後も定期的に歯科医師の検診を受けることが大切です。
定期検診では、歯の位置やリテーナーの適合状態をチェックし、必要に応じて調整を行います。早期に問題を発見し、適切な対処をすることで後戻りを防ぐことができます。定期検診は、治療後の最初の数ヶ月から数年にわたり、継続的に行うことが重要です。
当院では、保定期間中も何度か通院していただき、定期的に診察を行いますので、安心してお任せいただければと思います。

後戻りしてしまった場合の対処法
もしも後戻りが起きてしまった場合でも、適切な対処法があります。
まず大切なのは、自力で歯並びを治そうとしないことです。指や棒で毎日長い時間押すことによって理論的には歯は動きますが、力のかけ具合や向きを誤ってしまうと歯の寿命を縮めたり、かえって歯並びが悪くなるリスクがあります。
後戻りの程度が軽い場合は、リテーナーの装着時間を増やすことで改善することもあります。しかし、後戻りの程度が大きい場合は、再治療が必要になることもあります。
再治療の方法としては、マウスピース矯正やワイヤー矯正などがあります。特にマウスピース矯正「インビザライン」は、後戻りの再治療に適しており、目立ちにくく痛みや違和感も感じにくい傾向があります。
当院では、日本矯正歯科学会認定医として、専門的な知識と経験を活かした治療を提供しております。後戻りが気になる場合は、早めにご相談ください。

矯正治療後の長期的な安定を目指して
矯正治療は、歯を動かす期間だけでなく、その後の保定期間まで含めて初めて完了します。
人生100年時代において、矯正治療で手に入れた美しい歯並びを10年後、20年後も維持していくためには、日々の生活習慣が非常に重要です。リテーナーの使用、舌の位置の意識、鼻呼吸の習慣、歯ぎしり対策、そして定期的な歯科検診という5つのポイントを守ることで、後戻りのリスクを最小限に抑えることができます。
また、虫歯や歯周病などの口内トラブルも後戻りのリスクを高める要因となります。日々の丁寧な歯磨きとプロによるクリーニングで、口内環境を清潔に保ちましょう。
当院では、最前線の現場で身につけた矯正治療の知見と、お口全体を診る1口腔単位の歯科治療を組み合わせることで、患者様のお口の健康、ひいては生活の質の維持・向上を目指しております。
まとめ
矯正治療後の後戻りは、適切な対策を講じることで防ぐことができます。
リテーナーの装着、舌の位置の意識、鼻呼吸の習慣、歯ぎしり対策、定期的な歯科検診という5つのポイントを日常生活に取り入れることで、美しい歯並びを長期的に維持することが可能です。
後戻りが起きてしまった場合でも、早期に対処することで再治療の負担を軽減できます。気になる症状がある場合は、早めに歯科医師に相談することをおすすめします。
矯正治療で手に入れた美しい歯並びは、あなたの人生を豊かにする大切な財産です。日々のケアを怠らず、健康な歯並びを維持していきましょう。
神戸市西区の西神南にある当院では、日本矯正歯科学会認定医として専門的な知識と経験を有しており、患者様にご満足いただける治療を行います。矯正治療や後戻りについてのご相談は、ぜひBelle歯科・矯正歯科までお気軽にお問い合わせください。

著者情報
Belle歯科・矯正歯科 院長 竹内優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会

