ワイヤー矯正治療は、美しい歯並びと正しい噛み合わせを手に入れるための効果的な方法です。
しかし、治療中にはさまざまなトラブルが起こる可能性があります。ワイヤーが口の中に刺さって痛い、ブラケットが外れてしまった、装置が当たって口内炎ができた・・・こうした問題に直面したとき、どう対処すれば良いのでしょうか。
矯正治療は長期間にわたる取り組みであり、患者様ご自身の協力が治療の成否を大きく左右します。トラブルが起きたときに適切に対処できるかどうかが、治療をスムーズに進めるための重要なポイントとなるのです。
この記事では、ワイヤー矯正中に起こりがちなトラブルとその対処法について、日本矯正歯科学会認定医としての知見を踏まえて詳しく解説します。

ワイヤー矯正中によくあるトラブルとは
矯正治療を始めると、お口の中に装置が入ることで、これまで経験したことのない違和感や痛みを感じることがあります。
特にワイヤー矯正では、ブラケットやワイヤーといった金属製の装置を歯に固定するため、さまざまなトラブルが生じやすい傾向があります。治療開始直後は特に、装置に慣れるまでの期間にトラブルが集中しやすいものです。
装置が口の中に刺さる・当たる
ワイヤー矯正で最も多いトラブルの一つが、ワイヤーやブラケットが口の中の粘膜に刺さったり当たったりすることです。
歯が移動してくると、ワイヤーが真っすぐになり、余った部分が口の中に刺さることがあります。また、治療開始直後は歯並びが整っていないため、ワイヤーがでこぼこした状態で装着されており、ずれやすくなっています。
ブラケットが唇の裏側に当たって痛みを感じたり、口内炎ができたりすることもよくあります。これは装置に慣れるまでの間に特に起こりやすい症状です。
装置が外れる・壊れる
ワイヤー矯正装置は歯に固定されていますが、絶対に外れないわけではありません。
食事の際に硬いものを噛んだり、前歯で噛みちぎったりすると、ブラケットが外れてしまうことがあります。また、治療開始直後は装置が気になって舌で押してしまったり、歯磨きの際に力加減がわからず引っ掛けてしまったりすることもあります。
リガチャーワイヤー(ブラケットとメインワイヤーを固定する細いワイヤー)のねじれ目が飛び出してくることもよくあるトラブルです。
痛みや違和感
矯正装置を装着してから数日間は、歯が動き始めることによる痛みが生じます。
全体に浮いたような感じで、固いものが噛めなくなることがあります。これは歯が動き始めたことによる正常な反応ですが、人によって痛みの強さや期間は異なります。
痛みは通常、数日から1週間程度で治まってきますが、我慢できないほどの痛みが続く場合は、すぐに歯科医院に相談する必要があります。

ワイヤーが刺さったときの対処法
ワイヤーが口の中に刺さって痛みを感じたとき、適切な対処法を知っておくことが大切です。
応急処置として自分でできることもありますが、根本的な解決のためには歯科医院での処置が必要になります。ここでは、ワイヤーが刺さったときの具体的な対処法をご紹介します。
矯正用ワックスを使用する
最も手軽で効果的な応急処置が、矯正用ワックスの使用です。
ワックスを必要な分だけカットして準備し、ワイヤーの角張っている部分や刺さっている部分に取り付けます。ワックスでワイヤーを保護することで、口の中の粘膜を傷つけるのを防ぐことができます。
ただし、ワックスを多くつけ過ぎると違和感を覚えたり、ワックスが取れてしまったりすることもあるので、必要量だけつけるように注意しましょう。矯正治療を開始したら、常にワックスを携帯しておくことをおすすめします。
歯科医院でワイヤーをカットしてもらう
でこぼこしていたワイヤーが真っすぐになってワイヤーが余った場合には、歯科医院でワイヤーをカットしてもらいましょう。
ワイヤーを適切にカットしてもらえば、痛みの原因を根本から取り除くことができます。似た対処法として、ワイヤーを折り曲げる方法もあります。ワイヤーは残したまま末端を折り曲げることで、口の中に当たらないようにします。
カットするか折り曲げるかは、治療の進行状況や歯の動き方によって判断が異なるため、歯科医院で相談の上、決めることが大切です。
リガチャーワイヤーが飛び出したときの応急処置
リガチャーワイヤーのねじれ目が飛び出してきた場合、応急処置として自分で対処することも可能です。
爪や楊枝、割りばしの先などで、メインワイヤーの内側に押し込んでください。ただし、これはあくまで応急処置であり、次回の診察時に歯科医師に報告することが重要です。
無理に押し込もうとして粘膜を傷つけないよう、慎重に行いましょう。

ブラケットが外れたときの対処法
ブラケットが外れてしまった場合、すぐに適切な対応をとることが治療の進行を妨げないために重要です。
装置が外れたまま放置してしまうと、矯正治療がストップしてしまい、せっかく整ってきた部分も後戻りが起こるなど、さまざまなトラブルにつながります。ここでは、ブラケットが外れたときの具体的な対処法をご説明します。
すぐに歯科医院に連絡する
ブラケットが外れてしまった場合、まずはすぐに歯科医院に連絡してください。
電話でどのような状態かを詳しく説明し、できるだけ早く再装着の予約を取りましょう。外れたブラケットは捨てずに保管し、診察時に持参してください。再利用できる場合もあります。
ブラケットが完全に外れてワイヤーから離れている場合は、誤飲しないよう注意が必要です。ワイヤーに引っかかったまま外れている場合は、ワックスで固定して動かないようにしておくと良いでしょう。
外れたブラケットの保管方法
外れたブラケットは、小さなケースやビニール袋に入れて保管してください。
ティッシュに包んで保管すると、誤って捨ててしまう可能性があるため避けましょう。また、ブラケットには接着剤が付いている場合があるので、清潔な状態で保管することが大切です。
診察時には、いつ外れたのか、どのような状況で外れたのかを歯科医師に伝えることで、今後の予防策を立てることができます。

痛みや違和感への対処法
矯正治療中の痛みや違和感は、多くの患者様が経験する症状です。
適切な対処法を知っておくことで、治療期間中も快適に過ごすことができます。ここでは、痛みや違和感を軽減するための具体的な方法をご紹介します。
装着直後の痛みへの対処
矯正装置を装着してから数日間は、歯が動き始めることによる痛みが生じます。
この痛みは歯が動いている証拠であり、正常な反応です。氷嚢で皮膚の上から冷やしたり、氷をお口の中で転がして冷やしたりすると、痛みは和らぎます。
どうしても我慢できない場合は、市販の痛み止めを服用しても構いません。ただし、痛みが数日以上続く場合や、我慢できないほどの激しい痛みがある場合は、すぐに歯科医院に相談してください。
痛みがある期間は、柔らかい食事を中心に摂ることをおすすめします。おかゆ、うどん、豆腐、ヨーグルトなど、噛む力をあまり必要としない食品を選びましょう。
装置が当たって痛いときの対処
唇の裏側にブラケットやワイヤーの痕がついたり、口内炎ができたりした場合は、痛む場所に当たる装置の上にワックスを付けてカバーしてください。
ワックスで保護することで、粘膜への刺激を軽減することができます。それでも我慢できない痛みがある場合は、すぐに歯科医院に連絡しましょう。
口内炎ができてしまった場合は、口内炎用の軟膏を使用することも効果的です。ただし、装置の上から塗布すると効果が薄れるため、装置に当たらない部分に塗るようにしてください。

矯正治療中の日常生活で気をつけること
トラブルを未然に防ぐためには、日常生活での注意が欠かせません。
食事の仕方、歯磨きの方法、装置の取り扱いなど、ちょっとした心がけで多くのトラブルを避けることができます。ここでは、矯正治療中の日常生活で特に気をつけていただきたいポイントをご説明します。
食事の際の注意点
食べ物はほぼ何を食べても構いませんが、食べ方に注意が必要です。
前歯で噛みちぎったり、噛み切ったりすると、ブラケットが外れる原因になります。りんごや肉などは、あらかじめ小さく切ってから奥歯で噛むようにしてください。
硬いものや粘着性の高い食べ物は、装置を壊す原因となるため避けましょう。キャラメル、ガム、おせんべい、氷などは特に注意が必要です。また、装置を付けていると痛みや違和感がある期間は、柔らかい食事を選ぶことをおすすめします。
歯磨きの重要性
矯正装置を入れていると、汚れが溜まりやすく、むし歯や歯ぐきの病気になりやすくなります。
歯ブラシはいつも持ち歩き、食事の後は必ず歯磨きをしてください。汚れが落ちるまで歯磨き粉は付けないで磨き、鏡で汚れがしっかり落ちたかどうかを確認しましょう。
一度に全部きれいにするのは難しいので、汚れが溜まりやすい箇所を覚え、重点的に磨くようにしてください。ブラケットと歯ぐきの間やワイヤーの下もよく磨くことが大切です。歯間ブラシやタフトブラシも併用すると、より効果的に汚れを除去できます。
装置への刺激を避ける
装置を付けると痛みや違和感がありますが、指や舌で触ると壊れる原因となりますので注意してください。
特に治療開始直後は装置が気になって触りたくなりますが、できるだけ触らないようにしましょう。舌で押したり、唇で引っ張ったりする癖がある場合は、意識的に控えることが大切です。
スポーツをする際は、マウスガードの使用を検討してください。特にコンタクトスポーツでは、装置が口の中を傷つけるリスクが高まります。
定期的な通院の重要性
矯正治療を成功させるためには、定期的な通院が欠かせません。
予約を守り、計画通りに治療を進めることが、理想的な歯並びを手に入れるための近道です。通院を怠ると、治療期間が延びるだけでなく、予期せぬトラブルが発生する可能性も高まります。
調整の重要性
矯正治療では、通常3〜4週間に一度の頻度で通院し、装置の調整を行います。
この調整によって、歯を計画通りに動かしていくことができます。予約をキャンセルしたり、長期間通院しなかったりすると、歯の動きが止まってしまったり、予期しない方向に動いてしまったりすることがあります。
また、定期的な通院時には、むし歯や歯周病のチェックも行います。早期発見・早期治療によって、矯正治療を中断せずに済むことができます。
トラブル時の早期対応
装置が外れたり、ワイヤーが刺さったりといったトラブルが起きた場合、次の予約を待たずにすぐに連絡することが大切です。
早期に対応することで、治療の遅れを最小限に抑えることができます。また、痛みや違和感が続く場合も、我慢せずに相談してください。
当院では、患者様とのコミュニケーションを大切にしており、どんな小さな疑問や不安にも丁寧にお答えしています。治療に対する理解を深めていただくことが、スムーズな治療の進行につながると考えています。
まとめ
ワイヤー矯正中には、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。
しかし、適切な対処法を知っておくことで、多くの問題は解決できます。ワイヤーが刺さったときは矯正用ワックスを使用し、ブラケットが外れたらすぐに歯科医院に連絡する、痛みがあるときは冷やしたり柔らかい食事を選んだりするなど、基本的な対処法を覚えておきましょう。
日常生活では、食事の際に前歯で噛みちぎらない、食後は必ず歯磨きをする、装置を指や舌で触らないといった注意点を守ることが大切です。そして何より、定期的な通院を欠かさず、トラブルが起きたときは早めに相談することが、治療を成功させるための鍵となります。
矯正治療は、患者様ご自身の協力があってこそ成功するものです。10年後、20年後も健康で美しい歯並びを維持するために、一緒に頑張りましょう。
Belle歯科・矯正歯科では、日本矯正歯科学会認定医として、専門的な知識と経験を活かした矯正治療を提供しています。神戸市西区の西神南に位置し、西神中央、伊川谷、学園都市を含む広範囲のエリアから患者様にご来院いただいております。
矯正治療に関するご相談やお悩みがございましたら、お気軽にお問い合わせください。詳細はこちら:Belle歯科・矯正歯科

著者情報
Belle歯科・矯正歯科 院長 竹内優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会

