歯列矯正とほうれい線の関係とは
「歯列矯正をするとほうれい線が濃くなる」という話を耳にしたことはありませんか?
実際に矯正相談にいらっしゃる患者様の中にも、この点を気にされる方が少なくありません。結論から申し上げると、歯列矯正そのものが直接ほうれい線を作り出すわけではありません。ほうれい線は「鼻の横から口元にかけてできる境界線」のようなもので、その目立ち方は骨格や表情筋のつき方によって個人差が大きい部分です。
歯列矯正は「口の中」にアプローチする治療であり、皮膚の状態そのものを変化させるものではありません。ただし、歯並びが変わることで口元の形態が変化し、その結果としてほうれい線の見え方が変わることはあります。特に「出っ歯」や「口ゴボ」と呼ばれる状態を矯正する場合には、注意が必要なケースもあります。

ほうれい線が深くなる3つの原因
まず、ほうれい線がなぜ深くなるのかを理解しておきましょう。
コラーゲンとエラスチンの劣化・減少
肌の弾力を保つために欠かせない成分であるコラーゲンとエラスチンは、加齢とともに劣化・減少していきます。これらの成分が減少すると、真皮部分がゆるみ、肌表面にたるみとなって表れるのです。紫外線や喫煙なども、これらの成分を破壊する要因となります。
脂肪組織の構造変化
脂肪組織も肌のハリに深い関わりがあります。太ったり痩せたりを繰り返すことで構造的に変化し、シワやたるみの状態に影響を与えるのです。
表情筋の衰え
「表情筋」は顔のさまざまな箇所を動かす筋肉の総称で、皮膚のすぐ下に位置して顔全体を内部から支えています。口輪筋、頬筋、上唇挙筋、オトガイ筋など、口周りには特に重要な筋肉が集まっています。これらの筋肉が衰えることで顔全体の皮膚が下がり、ほうれい線が目立ちやすくなる傾向があります。
出っ歯矯正でほうれい線が目立つメカニズム
出っ歯の方は、前方に飛び出した前歯のおかげで、鼻の下の皮膚がピンと張り伸ばされている状態です。
歯列矯正によって前歯を本来の位置まで引っ込めると、出っ歯の時の「張り」がなくなることで、鼻の下の皮膚が若干余った状態になります。結果的に、それが頬と鼻の下の皮膚の境界線を際立たせることになり、「ほうれい線が濃くなった」と見える場合があるのです。
実際には「濃くなった」というよりも、突き出した前歯によって目立たなくなっていたほうれい線が「本来の自然な状態に戻った」と表現する方が正確でしょう。口元の突出感が減ることで、頬の皮膚がたるんで見えることもあります。特に、抜歯を伴う矯正治療では、歯を抜いたスペース分だけ歯列が後退するため、この変化が起こりやすい傾向があります。
ただし「抜歯矯正=ほうれい線ができる」というわけではありません。抜歯が必要になるのは、歯が凸凹に生えている場合に、歯を正しい位置に移動させ、バランスの良い口元を作るためです。歯列に歯が並ぶための十分な空間がないことが主な原因で、適切な診断と歯の移動設計があれば、過度な変化を避けることができます。

矯正中の食生活と表情筋の関係
矯正治療中にほうれい線が気になるようになる原因として、食生活の変化と表情筋の使用頻度低下があります。
食生活の変化による影響
矯正中は装置が付いているため、硬いものや粘着性の高いものが食べにくくなります。そのため、柔らかいものや食べやすいものばかりを食べるようになり、栄養バランスが偏ってしまうことがあります。特に、タンパク質やビタミンCなどの栄養素が不足すると、肌のハリや弾力が低下し、ほうれい線が目立ちやすくなります。
表情筋の使用頻度低下
矯正中は、装置が口の中に装着されているため、口を大きく動かしにくくなります。そのため、表情筋を使う機会が減り、筋肉が衰えてしまうことがあります。マウスピース矯正やワイヤー矯正の初期には、装置の違和感で口を動かしにくく、発音しにくく、人前で話すのが億劫になることもあります。
その結果、筋肉を使う頻度が減り、一時的に「表情がかたくなった」「笑顔がぎこちない」と感じることがあります。これは筋トレを一時的にやめた時のような「使用頻度の低下」によるもので、表情筋そのものが矯正でダメージを受けたり、衰えたりするわけではありません。
矯正中のほうれい線予防対策
矯正中に「ほうれい線が気になる」そうならないためにも、日頃から予防対策をしておくことが大切です。
バランスの取れた食事
肌の健康を維持し、ほうれい線を予防するためには、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。特に、タンパク質やビタミンCを積極的に摂取しましょう。矯正中でも食べやすい食材を工夫して選び、栄養バランスを保つことが大切です。
表情筋トレーニング
矯正中は、装置の影響で口を大きく動かしにくいため、意識的に表情筋を鍛えておくとほうれい線予防につながります。
簡単にできるトレーニングとしては、「あいうえお」と大きく口を動かす発音練習や、口角を意識的に上げる練習などがあります。顔全体にある細かい筋肉群を動かすことで、眉を動かしたり、口角を上げたり、目を細めたりといった表情をつくる動きを維持できます。
スキンケアと保湿
唇や口元の保湿・ケアも重要です。乾燥は肌のハリや弾力を低下させる要因となるため、適切なスキンケアを心がけましょう。紫外線対策も忘れずに行うことで、コラーゲンやエラスチンの破壊を防ぐことができます。
生活習慣の見直し
喫煙は皮膚のコラーゲンや弾力繊維を破壊する作用があるため、できるだけ避けることをおすすめします。また、長時間うつむいた姿勢は、首や肩の筋肉を緊張させ、顔の皮膚を下方向に引っ張ってしまい、肌がたるみほうれい線が色濃く出る可能性があります。姿勢を意識的に正すことも大切です。
出典株式会社ロッテ「ガム咀嚼とフェイスラインに関する研究」(2024年)より作成

矯正治療後の表情の変化
矯正治療が進み、歯並びや噛み合わせが整ってくると、ポジティブな変化が期待できます。
口元の動きがなめらかになり、口角が自然に上がるようになります。コンプレックスが減ることで、笑顔が増えるという心理的な効果も大きいでしょう。表情筋は「動かせば戻る」「意識すれば鍛えられる」という性質を持っています。
正しい噛み合わせになると、口周りの頬筋や口輪筋などの動きが変わります。例えば、出っ歯の場合は前歯が噛み合わず、奥歯でしか噛むことができませんでした。矯正後は、全体的に噛めるようになり、前歯の周りの筋肉もしっかりと動かせるようになるのです。
軽い顔ヨガや、口角を意識した発音練習などを日常に取り入れることで、柔らかな笑顔や豊かな表情を取り戻すことは十分可能です。矯正治療は1〜3年程度かかる治療ですが、その間に適切なケアを行うことで、むしろ表情は「活き活き」としてきます。
ほうれい線が改善されるケースもある
歯列矯正によってほうれい線が改善されるケースもあります。
歯並びが整うことで顔全体のバランスが変化し、口元の印象が変わることで、ほうれい線が薄くなる場合があるのです。特に、骨格や歯並びの問題で口元が不自然な形になっていた場合、矯正によって本来のバランスが取り戻され、結果的にほうれい線が目立たなくなることがあります。
ほうれい線と歯並びの関係は複雑で、必ずしも矯正がほうれい線を作るわけではありません。むしろ、歯並びが整うことで顔全体のバランスが改善し、ほうれい線が薄くなるケースもあります。
重要なのは、正しい診断と歯の移動設計です。歯を引っ込めすぎない、必要以上に抜かないという配慮が大切です。歯列矯正では歯のレントゲン写真や口腔内スキャンなどを用いて、患者様一人ひとりに最適な治療計画を立てることが重要です。
Belle歯科・矯正歯科での総合的なアプローチ
Belle歯科・矯正歯科では、単に歯を動かすだけでなく、患者様の「お顔全体のバランス」や「笑顔の印象」にも配慮した矯正治療を行っています。
日本矯正歯科学会認定医としての専門的な知識と経験を活かし、10年後、20年後を見据えた「未来を見据えた総合治療」を提案しています。患者様との「お話の時間」を大切にし、治療に対する理解を促進することで、一人ひとりに最適な治療計画をご提案いたします。
「口元が動かしにくい気がする」「笑顔が不自然になった気がする」そんな不安も、遠慮なくご相談ください。豊富な症例経験と、患者様目線のていねいなカウンセリングで、あなたらしい笑顔を引き出すお手伝いをいたします。
院内併設の歯科技工室により、矯正装置などの製作物を精密かつ迅速に作製することが可能です。また、予防歯科を専門に学んだ歯科医師による口腔健康サポートも行っており、矯正治療中の栄養指導や表情筋のケアについてもアドバイスさせていただきます。

まとめ
歯列矯正とほうれい線の関係は、一概に「矯正するとほうれい線ができる」とは言えません。
出っ歯や口ゴボの矯正では、口元の突出感が減ることで一時的にほうれい線が目立つように感じることがありますが、これは本来の自然な状態に戻ったと考えるべきです。矯正中の食生活の変化や表情筋の使用頻度低下が影響することもありますが、適切なケアを行うことで予防できます。
バランスの取れた食事、表情筋トレーニング、スキンケア、生活習慣の見直しなど、日常的なケアを心がけることが大切です。矯正治療が進み、歯並びや噛み合わせが整ってくると、口元の動きがなめらかになり、むしろ表情は活き活きとしてきます。
正しい診断と歯の移動設計、そして患者様とのコミュニケーションを大切にした治療アプローチが、理想的な結果につながります。ほうれい線が気になる方も、安心して矯正治療を受けていただけるよう、Belle歯科・矯正歯科では全力でサポートいたします。
矯正治療に関するご相談や、口元の変化についての不安がございましたら、お気軽にお問い合わせください。詳しい治療内容や症例については、Belle歯科・矯正歯科の公式サイトをご覧ください。

著者情報
Belle歯科・矯正歯科 院長 竹内優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会

