矯正治療を始めると、多くの患者様が最初に戸惑うのが「歯磨き」です。
ワイヤーやブラケットが装着された状態では、これまでと同じように磨くことが難しくなります。しかし、矯正中の適切なケアを怠ると、虫歯や歯周病のリスクが高まり、治療計画に影響を及ぼす可能性があります。
矯正治療中は、装置が歯に固定されているため、食べカスや歯垢が溜まりやすくなります。通常よりも時間をかけて丁寧に磨く必要があり、正しい方法を知ることが何より大切です。
この記事では、矯正中の歯磨き方法を6つのポイントに分けて詳しく解説します。ワイヤーやブラケット周りの磨き方、おすすめの歯ブラシやケア用品まで、虫歯を防ぐために知っておきたい実践的なテクニックをご紹介します。

矯正中は虫歯になりやすい|1日3回の丁寧な歯磨きが必須
矯正装置を装着すると、お口の中の環境は大きく変化します。
ブラケットやワイヤーが歯の表面に固定されることで、食べ物の残りカスや歯垢が付着しやすくなり、通常の状態よりも虫歯や歯周病のリスクが高まります。矯正装置は治療が終了するまで取り外すことができないため、装置を付けたまま歯磨きをする必要があります。
矯正中の歯磨きは「1日3回」が理想です。基本は「食べたら磨く」を心がけましょう。特に就寝前の歯磨きは重要です。睡眠中は唾液の分泌量が減少するため、お口の中が乾燥し、細菌が繁殖しやすい環境になります。就寝前に丁寧に磨くことで、虫歯のリスクを大幅に減らすことができます。
矯正装置を付けている間は、普段の歯磨きよりも時間をかけて丁寧に磨くことが求められます。特に注意したいのは、歯と歯の間、歯と矯正装置の間です。これらの部分は食べカスや歯垢が溜まりやすく、虫歯の発生源となりやすい場所です。
矯正治療中に虫歯ができてしまうと、虫歯の治療が必要となり、矯正治療を一時中断しなければならない場合があります。これにより治療期間が長引く可能性があるため、日々のセルフケアが非常に重要です。
ポイント①|ワイヤーの上部と下部を斜め45度で磨く
ワイヤー矯正の場合、ワイヤーに沿って歯ブラシを斜め45度に向けることが基本です。
ワイヤーの上部と下部には食べカスや歯垢が溜まりやすいため、毛先が細部まで届くように意識しましょう。歯ブラシを斜めに当てることで、ワイヤーと歯の隙間に毛先が入り込み、効果的に汚れを落とすことができます。
1本ずつ丁寧に磨くことを心掛けてください。焦って全体をざっと磨くのではなく、各歯に対して20回程度を目安に小刻みに動かすことで、磨き残しを防ぐことができます。
ポイント②|ブラケット周りは角度を変えて念入りに
ブラケット周りは、矯正装置の中で最も汚れが付着しやすい場所です。
ブラケットの周囲には複雑な凹凸があり、通常の歯磨きでは汚れを完全に落とすことが難しい部分です。歯ブラシを45度に傾け、ブラケットの上下左右から角度を変えて磨くことで、汚れを効果的に除去できます。
斜め上、斜め下などに角度を変えて磨くことで、ブラケットの隙間に入り込んだ食べカスや歯垢を取り除くことができます。ブラケット周りは特に念入りに磨くよう意識しましょう。

ポイント③|ワイヤー下は歯ブラシを縦にして磨く
ワイヤーの下は、矯正装置が邪魔になって最も磨きにくい部分です。
歯ブラシを縦に向けたり、毛先をワイヤーの下に少しだけ通して磨くことで、ワイヤー下の歯面もしっかりとケアできます。この部分を磨き残すと、虫歯や歯周病の原因となるため、特に注意が必要です。
ワイヤー下を磨く際は、歯ブラシの毛先が柔らかいものを選ぶと、歯や歯茎を傷つけずに磨くことができます。力を入れすぎず、優しく丁寧に磨くことが大切です。
ポイント④|歯と歯肉の境目を優しく磨く
歯と歯肉の境目は、歯垢が溜まりやすく、歯周病の原因となる場所です。
矯正装置の周りだけでなく、歯と歯肉の間にも毛先を入れて優しく磨くことが重要です。歯と歯肉の間に溜まった歯垢は、放置すると歯石となり、歯周病を引き起こす原因となります。歯石は歯科医院でなければ除去できないため、日々のケアで歯垢を溜めないことが大切です。
歯ブラシを鉛筆を持つように握ることで、過度な力がかからず、歯や歯茎にダメージを与えずに磨くことができます。鉛筆持ちのメリットは、歯ブラシを小刻みに動かしやすくなることです。これにより、汚れを効果的に落とすことができます。

ポイント⑤|前歯の裏と奥歯は歯ブラシを縦にして磨く
前歯の裏側は、歯ブラシを縦に向けて「かかと」をうまく使って汚れをかき出しましょう。
前歯の裏側は、矯正装置がない場合でも磨きにくい部分ですが、矯正中はさらに注意が必要です。歯面だけでなく、歯と歯茎の間もしっかりと磨いてください。
奥歯は、矯正治療中でなくても磨き残しをしやすい部分です。頬側、舌側どちらも歯ブラシの毛先を届かせてしっかりと磨きましょう。特にブラケット周りやワイヤー下が磨きにくい傾向がありますが、歯ブラシの角度と毛先を細部に届かせることを意識して汚れを落としましょう。
ポイント⑥|補助用具を活用して磨き残しを防ぐ
矯正中の歯磨きでは、通常の歯ブラシだけでは磨ききれない部分があります。
そのため、タフトブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどの補助用具を活用することが推奨されます。これらの補助用具を使用することで、細部の汚れを効果的に落とし、虫歯や歯周病の予防効果を高めることができます。
タフトブラシは、ヘッドが小さく、毛束が1つで山型になっているのが特徴です。歯を1本ずつ磨きやすく、歯と歯の間や歯と歯肉の境目、歯の裏側のブラッシングなどに適しています。ワイヤーの下やブラケット周りなど、通常の歯ブラシでは届きにくい部分を磨くのに非常に有効です。
歯間ブラシは、歯ブラシでは落としきれない歯と歯の間や、歯と歯肉の間の汚れを落とします。サイズが合わない歯間ブラシの使用や、やりすぎると歯肉を傷つけてしまうこともあるので注意しましょう。最近では歯肉に優しいゴムでできたタイプも出ています。
デンタルフロスは、歯と歯の間の汚れを落とす糸状の道具です。フロスにワックスがついているタイプや、柄(持ち手)がついているタイプもあります。矯正器具が付いている人向けのものもありますが、矯正中は扱うのがやや難しいかもしれません。1日1回はフロスを使用することで、歯と歯の間の磨き残しを防ぐことができます。
これらの補助用具を使用することで、手間と時間はかかりますが、虫歯や歯周病の予防効果を高めることができるので、ぜひ継続して行ってください。

矯正用歯ブラシとケア用品の選び方
矯正治療中の歯磨きには、矯正用歯ブラシやワンタフトブラシの使用がおすすめです。
矯正用歯ブラシには、毛束が山型のタイプと谷型のタイプがあります。谷型の歯ブラシは、矯正装置にあたる部分の毛が短くなっており、矯正装置へ負担をかけずに歯の表面を磨くことができます。山型の歯ブラシは、山型になっている毛先で歯と装置の間や、矯正装置が複雑に装着された部分も磨きやすいのが特徴です。
ワンタフトブラシは、毛束が1つで山型になっているのが特徴で、歯を1本ずつ磨きやすい歯ブラシです。歯と歯の間や歯と歯肉の境目、歯の裏側のブラッシングなどに適しています。裏側ブラケットを装着している時もワンタフトブラシをおすすめします。
普通の歯ブラシしか選べない場合は、なるべくヘッドが小さく毛束を細かに歯へあてられるものを選びます。ただし子ども用のものでは奥歯まで十分に磨けない可能性があるため、大人用の歯ブラシから選びます。歯と歯の間や裏側は、歯ブラシの先端部分を使って丁寧に磨きましょう。
矯正中であっても矯正装置がついていない部分などは、普通の歯ブラシを併用してしっかり磨くと良いでしょう。
口腔ケアグッズで虫歯予防をさらに強化
歯磨きだけでなく、口腔ケアグッズを活用することで、虫歯予防効果をさらに高めることができます。
染め出し剤は、歯に塗布して軽く口をゆすぐと、歯の汚れが赤く染まる薬剤です。磨き残しを目で確認できるので、自分の歯磨きの癖を把握することもできます。子供向けに、そのまま歯磨き粉の代わりになってくれるタイプもあります。鏡を見て磨く練習にも良いでしょう。
マウスウォッシュは、歯磨き後に使用することで、口腔内の細菌を減らし、虫歯や歯周病、口臭の予防に効果的です。ただし、マウスウォッシュは歯磨きの代わりにはなりませんので、必ず歯磨きをした後に使用してください。
フッ素配合の歯磨き粉や洗口剤は、歯の再石灰化を促進し、虫歯予防に効果的です。フッ素は歯の表面を強化し、酸に対する抵抗力を高めます。矯正治療中は虫歯のリスクが高まるため、フッ素配合の製品を積極的に使用することをおすすめします。
キシリトールガムは、虫歯菌(ミュータンス菌)を抑制する効果があります。食後にキシリトールガムを噛むことで、唾液の分泌を促進し、口腔内を中性に保つ効果も期待できます。

マウスピース矯正中の歯磨き方法
マウスピース矯正の場合は、ご自身で簡単に矯正装置を取り外せるため、矯正前と同じように歯磨きができます。
マウスピース矯正は、ご自身のお好きなタイミングで矯正装置を取り外すことができるため、ワイヤー矯正と比べて歯磨きが容易です。ワイヤー矯正と同様に、汚れがたまりやすい「歯と歯肉の間」、「奥歯」、「前歯」を丁寧かつ優しく磨きましょう。
また、マウスピース矯正中はご自身の歯磨きだけでなく、矯正装置であるマウスピース自体のケアも重要です。マウスピースは毎日洗浄し、清潔に保つことで、細菌の繁殖を防ぎ、口腔内の健康を維持できます。
食生活と口腔内のpH変化|規則正しい食習慣を
歯が酸にさらされる時間が長いと、歯からミネラル分(カルシウム、リン)が溶けて、脱灰という現象が起こります。
これが虫歯の第一歩です。甘いものは、食事とセットにすることで、間食を減らし、糖を摂取する回数を減らしましょう。スポーツドリンクやジュースなどの糖質を多く含む飲料水等は、こまめに飲むと酸にさらされる時間が長くなります。お茶か水にすることによって酸にさらされるリスクを減らせます。
唾液の量が減る就寝時は虫歯になりやすい時です。就寝前の食事は控えましょう。唾液は、食事で酸性になった口の中を中性から弱アルカリ性に戻す力があります。酸は歯を溶かして虫歯を作る元です。唾液が中和をしてくれて、溶けだした歯のミネラルを再度取り込む、再石灰化を起こします。食事の時は、良くかんで唾液をたくさん出しましょう。
食後にキシリトールのガムを噛むことで、唾液をたくさん出して、キシリトールによりミュータンス菌(虫歯菌)の活性を弱めることができます。
歯科医院でのプロフェッショナルケアも重要
矯正治療中は、ご自身でのセルフケアだけでなく、歯科医院でのプロフェッショナルケアも非常に重要です。
当院では、矯正装置を付ける前に正しい歯磨きの仕方をお教えします。矯正装置を付けてからも、通院の度に歯科衛生士による歯のクリーニングを行います。歯の根の所に付いた歯石などは、自分では取れないものです。専用の器具と技術で歯をきれいにして、汚れを付きにくくさせます。
定期的なプロフェッショナルケアを受けることで、虫歯や歯周病のリスクを大幅に減らすことができます。矯正治療中は、通常よりも頻繁に歯科医院でのメインテナンスを受けることをおすすめします。
まとめ|矯正中の歯磨きは丁寧さと継続が鍵
矯正治療中の歯磨きは、通常よりも時間と手間がかかりますが、虫歯や歯周病を防ぐために非常に重要です。
ワイヤーやブラケット周りを斜め45度で磨く、歯ブラシを縦にしてワイヤー下を磨く、補助用具を活用するなど、6つのポイントを押さえることで、効果的に汚れを落とすことができます。矯正用歯ブラシやタフトブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどの補助用具を活用し、1日3回、特に就寝前は丁寧に磨くことを心がけましょう。
また、フッ素配合の歯磨き粉やマウスウォッシュ、キシリトールガムなどの口腔ケアグッズを活用することで、虫歯予防効果をさらに高めることができます。規則正しい食生活と、歯科医院でのプロフェッショナルケアも忘れずに行いましょう。
矯正治療を計画通りに進め、美しい歯並びと健康な歯を手に入れるために、日々のセルフケアを継続することが何より大切です。
矯正治療中の歯磨きやケアについてご不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。詳細はこちら:Belle歯科・矯正歯科
著者情報
Belle歯科・矯正歯科 院長 竹内優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会


