矯正治療は、数年にわたる長期的な治療です。
そして、決して安くない費用がかかります。
だからこそ、クリニック選びで失敗すると、時間もお金も、そして何より「理想の歯並び」という目標を失ってしまうリスクがあります。実際、矯正治療を受けた方の中には「もっと慎重に選べばよかった」と後悔する声も少なくありません。
では、どうすれば後悔しない矯正歯科を選べるのでしょうか?
今回は、矯正歯科専門医として長年診療に携わってきた経験から、クリニック選びで必ずチェックすべき6つのポイントを解説します。認定医の有無、設備、料金体系など、治療開始前に確認しておくべき項目を、わかりやすくお伝えします。

矯正歯科選びで失敗しないための基本知識
矯正歯科を選ぶ前に、まず知っておいていただきたいことがあります。
日本では、歯科医師免許を持っていれば、矯正歯科の看板を掲げることができます。これを「自由標榜制」といいます。つまり、矯正治療の経験がほとんどない歯科医師でも、診療科目に「矯正歯科」と書くことが法律上可能なのです。
そのため、看板だけでは、その歯科医師がどれだけの矯正治療の知識や技術を持っているのか判断できません。
また、矯正歯科治療を提供している医療機関には、大きく分けて3つのタイプがあります。大学病院の矯正科、一般歯科医院、そして矯正専門の歯科医院です。それぞれにメリット・デメリットがあり、患者様のライフスタイルや治療内容によって最適な選択肢は異なります。
こうした背景を理解したうえで、次に紹介する6つのポイントをチェックすることが、後悔しないクリニック選びの第一歩となります。
ポイント1|日本矯正歯科学会「認定医」の資格を持っているか
最初に確認すべきは、担当する歯科医師が「日本矯正歯科学会認定医」の資格を持っているかどうかです。
日本矯正歯科学会は、日本最大の矯正歯科学会であり、認定医になるには厳しい条件があります。大学病院などの認定された施設で5年以上の専門的な研修を受け、さらに学会の試験に合格する必要があります。つまり、認定医は矯正治療の専門知識と技術を持つことが公的に認められた歯科医師なのです。
一般歯科と矯正歯科の両方を診療科目として掲げている歯科医院の場合、院長自身が矯正治療を行うケースと、月に数回、大学病院などから矯正専門医が来て治療するケースがあります。後者の場合、治療日が限られるため、装置が外れたなどの緊急時に迅速な対応が難しいこともあります。
矯正専門の歯科医院では、矯正治療に特化した歯科医師が常勤しているため、一貫した治療が受けられ、急なトラブルにも対応しやすいという利点があります。症例数も一般歯科医院の約10倍といわれており、豊富な経験に基づいた治療を期待できます。
認定医の資格は、日本矯正歯科学会のホームページで確認できますので、受診前にチェックすることをおすすめします。

ポイント2|セファログラムやCT撮影などの検査設備が整っているか
矯正治療において、正確な診断は成功の鍵を握ります。
そのために不可欠なのが「セファログラム(頭部X線規格写真)」です。セファログラムは、世界共通の撮影方法で、顔面と頭部のX線写真を撮影し、上下のあごの大きさやズレ、あごの形、歯の傾斜角度、口元のバランスなどを分析します。
例えば、同じ「出っ歯」でも、上あごが前に出ているのか、下あごが小さいために相対的に前に出て見えるのかでは、治療方針がまったく異なります。セファログラム分析を行うことで、こうした骨格的な問題を正確に把握し、患者様に最適な治療計画を立てることができます。
矯正専門医にとって、セファログラム分析なしに本格的な矯正治療を開始することは考えられません。
さらに、CT検査を行えば、骨や歯の状態を3次元的に確認でき、より精度の高い診断が可能になります。一般的な歯科医院で使用する「パノラマレントゲン」は平面画像のため、得られる情報が限られます。
こうした検査設備が整っているかどうかは、歯科医院のホームページで確認するか、初診相談時に直接尋ねることをおすすめします。
ポイント3|複数の矯正装置を取り扱っているか
矯正装置には、さまざまな種類があります。
近年注目されているマウスピース型矯正装置は、着脱ができて目立ちにくいという利点がありますが、すべての症例に適しているわけではありません。歯のねじれが強い場合や、抜歯を伴う大幅な歯の移動が必要な場合には、従来のワイヤー矯正の方が適していることもあります。
患者様の歯並びや噛み合わせの状態は一人ひとり異なります。そのため、複数の矯正装置を取り扱っているクリニックであれば、患者様の症状に最も適した治療法を選択できる可能性が高まります。
逆に、マウスピース矯正のみを取り扱っている歯科医院の場合、注意が必要です。矯正専門の歯科医師がマウスピース矯正専門を行っている場合は問題ありませんが、セミナーを受講すれば歯科医師であれば誰でもマウスピース矯正を提供できるため、矯正の知識が十分でない歯科医師でも手を出しやすい分野なのです。
初診相談時には、どのような矯正装置を取り扱っているか、そして自分の症例にはどの装置が最適かを、しっかりと説明してもらうことが大切です。

ポイント4|料金体系が明確で、トータルフィー制度を採用しているか
矯正治療は自費診療のため、費用が高額になりがちです。
そして、装置代だけでなく、検査料、調整料、保定装置代など、さまざまな費用が発生します。治療開始前に総額がわからないと、予想外の出費に驚くことになりかねません。実際、矯正経験者を対象とした調査では、約36%の方が「治療前の想定より費用が高かった」と回答しています。
こうした事態を避けるために、「トータルフィー制度」を採用しているクリニックを選ぶことをおすすめします。トータルフィー制度とは、治療開始前に総額を提示し、原則として追加費用が発生しない料金体系です。
カウンセリングでは、必ず以下の点を確認しましょう。
- 総額でいくらかかるのか
- 追加費用は発生しないのか(発生する場合、どのような条件で発生するのか)
- 支払い方法(分割払いは可能か、デンタルローンは利用できるかなど)
料金体系が明確で、納得したうえで治療を開始できるクリニックを選ぶことが、安心して治療を続けるために重要です。
ポイント5|治療方針や治療計画を丁寧に説明してくれるか
矯正治療は、患者様と歯科医師の信頼関係のうえに成り立ちます。
そのため、治療方針や治療計画を丁寧に説明してくれるクリニックを選ぶことが大切です。専門用語を多用せず、模型やiPadなどを使ってわかりやすく説明してくれるかどうかは、重要な判断基準となります。
初診相談では、以下のような内容を確認しておくとよいでしょう。
- 歯並びの気になる点
- どのように治してほしいか
- 今までかかった大病の有無
- 抜歯経験の有無
- 顎関節の痛みの有無
初診相談の際、治療の決意が固まってきたら、精密検査の予約を入れ、後日、セファログラムやパノラマレントゲン、歯型の採得、口と顔の写真撮影などの検査を受けます。もちろん、相談や精密検査を受けたからといって、その場で治療を受けるかどうかを決める必要はありません。
治療方針などに迷いや疑問がある場合は、納得いくまで説明を受けましょう。それでもなお疑問や不安が解消されないときには、セカンドオピニオンとして別の矯正歯科を訪ねてみることも選択肢の一つです。
初診相談は、基本的に「患者様主体のカウンセリング」です。遠慮せず、お悩みや疑問、不安点を解決することを優先してください。

ポイント6|通院しやすい立地と診療時間か
矯正治療は、通常2〜3年程度の期間がかかります。
その間、月に1回程度の通院が必要になるため、通院しやすい立地と診療時間であることも重要なポイントです。自宅や職場から遠すぎると、通院が負担になり、治療を途中で断念してしまうリスクもあります。
また、診療時間も確認しておきましょう。平日の日中しか診療していないクリニックでは、仕事や学校で通院が難しい場合があります。土曜日や夜遅くまで診療しているクリニックであれば、ライフスタイルに合わせて通院しやすくなります。
矯正専門の歯科医院の中には、事前に連絡すれば診療時間外でも対応してくれるところもあります。登校・出勤前の早い時間や、仕事やお稽古終わりの夜遅い時間など、柔軟に対応してくれるかどうかも、確認しておくとよいでしょう。
長期間の治療だからこそ、無理なく通い続けられる環境を選ぶことが、治療成功の鍵となります。

まとめ|後悔しない矯正歯科選びのために
矯正治療は、時間も費用もかかる大きな決断です。
だからこそ、クリニック選びは慎重に行う必要があります。今回ご紹介した6つのポイントを参考に、ご自身に合ったクリニックを見つけてください。
- 日本矯正歯科学会「認定医」の資格を持っているか
- セファログラムやCT撮影などの検査設備が整っているか
- 複数の矯正装置を取り扱っているか
- 料金体系が明確で、トータルフィー制度を採用しているか
- 治療方針や治療計画を丁寧に説明してくれるか
- 通院しやすい立地と診療時間か
矯正治療は、単に歯並びを整えるだけでなく、噛み合わせの改善や口腔健康の維持・向上、ひいては生活の質の向上につながります。10年後、20年後も自信を持って笑える健康で美しい口元を実現するために、信頼できるクリニックを選びましょう。
神戸市西区の西神南にあるBelle歯科・矯正歯科では、日本矯正歯科学会認定医が在籍し、患者様一人ひとりに最適な治療計画をご提案しています。矯正治療の知見とお口全体を診る1口腔単位の歯科治療を組み合わせることで、患者様のお口の健康、ひいては生活の質の維持・向上を目指しております。
矯正治療をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。詳細はBelle歯科・矯正歯科の公式サイトをご覧ください。
著者情報
Belle歯科・矯正歯科 院長 竹内優斗
[経歴]
日本矯正歯科学会 認定医
近畿東海矯正歯科学会
インビザライン プラチナプロバイダー
兵庫県歯科医師会
神戸市歯科医師会
神戸市西区歯科医師会


